2026.08.31
株式会社grooveagent
二面に大きな窓を持つ角部屋で、住戸内にパイプスペースのない好条件。開放感のある住まいをつくれる一方、既存の天井にはアスベストが含まれており、すべてを撤去するには大きなコストがかかるという課題があった。
施主から共有されたのは、「広い空間に植物を置き、猫と暮らしたい」という暮らしのイメージ。間取りや使い方を細かく決めるのではなく、これから変化する暮らしを受け止められる余白が求められた。
そこでアスベストは除去せず、安全に囲い込み、天井を造作。築古ゆえの制約にコストを費やすのではなく、空間の質へ資金を振り向けた。さらに、特注金物の納まりを天井に美しく隠し、職人と実寸大モックアップを重ねながら、可変的なしつらえと間接照明を支える技術的基盤をつくった。
窓辺も単なる採光のための場所ではなく、多彩な居場所となる「余白」として計画。つくり込みすぎず、住みながら変化できる住まいを目指した。
壁は、空間を分ける。けれど、暮らしまで分ける必要があるだろうか。本プロジェクトでは、住まいの境界を「分けるためのもの」から、「変わるためのもの」へと捉え直した。
転勤により引っ越しを繰り返してきた夫婦が求めたのは、暮らしを固定する間取りではなく、変化を受け止める余白。提案したのは、二面の窓辺に沿って湾曲し、家全体を横断する「13メートルの建築的な線」、1本の造作カーテンレールである。
この「1本の線」は、空間を分けながら、同時につなぐ。開けば光と風が巡るワンルームとなり、閉じれば包まれる領域に、半開きにすればその中間へ。境界が動くことで、住まいの表情も暮らし方も変わっていく。「あるようでない。ないようである」境界である。さらにレールに仕込んだテープライトが、夜には天井に光の道を浮かび上がらせ、家全体をゆるやかにつなぐ。
境界が固定されなければ、場所の役割も固定されない。植物も、いつか迎える猫も、国や時代を越えて集めた民藝品も、受け継いだ道具も、その時々に居場所を変えていく。異なるものや物語が混じり合い、時間とともに風景を育てていく。
13メートルの線がつくったのは、完成された間取りではない。暮らしの変化を受け止め続ける、終わりなき「暮らしの骨董市」である。
| 費用 | 1838万円(税込) | 物件種別 | マンション |
|---|---|---|---|
| リノベーション 形態 |
中古を買ってリノベーション | 家族構成 | 二人暮らし |
| 築年数 | 53年 | 面積 | 60.00㎡ |
| 施工期間 | 3.5 | 構造 | SRC |
お問い合わせ先
〒107-0061 東京都港区北青山2-12-42 秀和第2北青山レジデンス705号室
TEL:03-6902-1941