2026.08.27
株式会社ブルースタジオ
「ただいま」と帰ってくる人がいなくなった家に、まだ意味はあるのだろうか。子どもたちは独立し、両親も見送った。Sさんが暮らすマンションは、かつて家族4人で過ごした住まいだったが、いまはひとり暮らしの家になっている。
この変化は、Sさんだけの話じゃない。単身世帯が増えるいまの日本社会の姿でもある。「家族が減ったら住まいも小さくすればいい」という考え方は根強い。子育て期に部屋を増やし、子どもが巣立てば個室が余り、最終的には「ひとりならこのくらいで十分」と縮めていく発想だ。
この家は壁式構造で、間取りを大きく変えられない。子ども部屋は「余った部屋」のまま、キッチンもただ料理をする場所だった。でもSさんには、お菓子作りをまた始めたい、友人を呼びたい、子どもたちが帰ってきたらみんなで過ごしたい、という気持ちがあった。「ひとり暮らし=縮めること」じゃない。
ひとり分の暮らしに、なぜ「たくさんの居場所」が必要なのか。このリノベーションはその問いに、部屋を減らすのではなく増やすという、まっすぐな答えを出した。家の真ん中には、半円形カウンターのオープンキッチンをどーんと据えた。お菓子をつくる人と、そこに集まる人の視線が自然につながる形で、キッチンは「料理する場所」から「人と人がつながる場所」へと変身している。 教室を開けば生徒さんとおしゃべりしながら手を動かせるし、友人が来れば料理しながら会話できるし、家族が集まれば自然と食事が始まる。この賑わいを支えるのが、道具を一つひとつチェックして組み立てた背面収納・カウンター下・パントリーまで含む細やかな収納計画。隣にはアトリエ、その先にはL型ソファで映画や読書を楽しむリラックススペース、必要以上に大きくしない眠るための場所も配置した。かつての子ども部屋は、ライブラリーとシネマスペースに生まれ変わり、ふだんはSさんの居場所、子どもたちが帰ってくれば家族の居場所に戻る。 リノベーション後、友人が前よりずっと頻繁に遊びに来るようになり、娘の友人までごはんを食べに来てくれるように。家を変えたら、つながる人の輪まで広がった。人生の後半は「縮める」ものじゃない。もう一度、暮らしを広げていい。この家は、静かにそう語りかけてくる。
| 費用 | 2250万円(税込) | 物件種別 | マンション |
|---|---|---|---|
| リノベーション 形態 |
持ち家のリノベーション | 家族構成 | 一人暮らし |
| 築年数 | 0年 | 面積 | 82.00㎡ |
| 施工期間 | 6ヶ月 | 構造 | RC |
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