2026.08.25
株式会社アルフレッシュ
都会ほど選択肢は多くなく、条件に合う中古マンションはなかなか見つからなかった。ようやく出会ったのが、この一室。内装は築年数なりに古びていたが、南側の視界を遮るものが何もなく、部屋いっぱいに光が差し込み、南北に風が通り抜ける心地よい部屋に巡り合えた。50代独身女性である施主は、実家に住む選択肢もあったが、一人で暮らすには広すぎ、今の生活スタイルや勤務先とも合わなかった。内覧には母が、最終確認には父が同行した。父の転勤のたびに家を建て、生涯4軒の家づくりをしてきた母は、対面キッチンもまだなかった時代に、自分で動線を考え抜いて棟梁に伝えてきたひとだった。規約や重要事項を隅々まで確認する父の慎重さも同様に、住まいへの向き合い方として、親から子へと確かに継承されていた。団塊世代が築いた資産をどう次世代へ動かすか。単身で生計を立てる暮らしが一般化した今、それはこれからの日本社会が向き合っていく課題だ。
洗濯機を止め、脱衣所を抜けて衣装部屋へ。そのままLDKに戻るまで、扉を一つも余分に開けない。3LDKをSLDKに変えた部屋は、50代独身の彼女が、自分の一日の動きを一つずつ洗い出してつくった住まいだ。ベッドはLDKに置き衣食住の大半を一室でまかない、その代わりに、家具や服、小物を一つひとつ吟味して選ぶ彼女のための衣裳部屋だけを独立させた。合理とこだわり、両方を諦めない間取りである。新しい器に自分を合わせるのではなく吟味して住まいをオーダーメイドすることが、彼女のリノベーションだった。
この部屋、持分は父45、娘55で登記されている。半々にしなかったのは、父母の意思だった。マンションを買わないかと切り出したのも彼女自身ではなく父母だった。賃貸を払い続けることへの不安を、先に感じていたのは親のほうだった。しかし全額を負担することは、自立した娘へのリスペクトを欠く——そう考え、住宅取得等資金の贈与税非課税措置と110万円の暦年贈与を組み合わせ、父と娘が出資する形をとった。動かしたかったのは、お金だけではない。実家は、今も両親が暮らしている。亡くなってから資産を相続でするのではなく、親が元気なうちに、生前贈与という形で先に動かす。そして実家という器は、いずれその広さを必要とする他者へと循環していく。動かす資産と手放す器。この両輪こそ、これからの社会が必要としていくかたちではないだろうか。
| 費用 | 1195万円(税込) | 物件種別 | マンション |
|---|---|---|---|
| リノベーション 形態 |
中古を買ってリノベーション | 家族構成 | 一人暮らし |
| 築年数 | 0年 | 面積 | 67.85㎡ |
| 施工期間 | 3ヶ月 | 構造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 |