2026.08.19
株式会社しわく堂
対象物件は、明治元年築の主屋と昭和期の2階建からなる、力強い木架構と土壁を備えた風格ある農家屋です。幾世代にもわたり大切に住み継がれてきましたが、新たな取得者へバトンタッチし、現代の暮らしへ適応させるには課題がありました。
まず、境界確定で長年の増改築による一部の道路越境が判明し、住宅ローン利用には解体による遵法化が必須でした。また、増築部により四国地方特有の美しい屋根形状「四方蓋」が隠れ、里の景観を構成する本来の伸びやかな姿が見えにくくなっていました。
さらに、無断熱による冬の寒さや低い耐震性、明治期特有の建具・差鴨居(内法1,730mm)は背の高いクライアントが頭を打つ高さであり、生活上の課題でした。
素晴らしい歴史を持つ古民家を未来の世代へ繋ぐため、既存建物のポテンシャルを最大限活かしながら、現代的なスケールと性能への丁寧なアップデートが求められました。
リノベ前提の戸建て中古物件探しは難しい。コストや技術的な改修の可否、環境条件など、一般の方には判断に迷う部分を、物件探しから伴走支援することで、ポテンシャルを秘めた古民家との出会いが実現しました。
道路越境部分は「減築」により遵法化し、里山に似合う伸びやかな、四国地方特有の「四方蓋」の屋根形状を復元しました。同時に玄関の位置を大胆に変更し、現代の車社会に適合した駐車場からのスムーズな動線を確保。
性能面では、耐震補強を施し、屋外から建物をすっぽり包む「外断熱」を採用することで、断熱性能では弱点だった土壁を内部に露出させ、調湿と蓄熱を担う力強く巨大な「サーマルマス」へと価値反転させ温熱環境を劇的に改善しました。生活上の課題であった高さ問題は、背の低い古建具は下駄上げし、構造上重要な差鴨居を上部へ移設するなど、大工の確かな手仕事で現代のスケールに適合させています。
また、既存素材は徹底して「生け捕り」にし、玄関には古建具2枚を組み合わせたハイスペックな古建具玄関ドアを製作。解体した壁土も練り直し、施主の広範囲なDIYによって再び内壁に塗り直すなど、建物の記憶と素材を次代へ美しく循環させています。
既存のポテンシャルを最大限に活かしながら、手間のかかる作業を施主の熱意と共に作り上げるプロセスは、これからの時代の住まいづくりの一つの解を提示するものです。
| 費用 | 2895万円(税込) | 物件種別 | 一戸建 |
|---|---|---|---|
| リノベーション 形態 |
中古を買ってリノベーション | 家族構成 | ファミリー |
| 築年数 | 158年 | 面積 | 219.67㎡ |
| 施工期間 | 10ヶ月 | 構造 | 木造 |