2026.08.19
リノベる株式会社
2023年に全国初の「人口減少危機突破宣言」を発表した山梨県。総人口が80万人を割り込む中、県は不要となった築30年の旧職員宿舎(全4棟45戸)を子育て世帯や移住者の拠点として再生する事業者を公募した。対象物件は、甲府市街地と八ヶ岳の大自然の中間、戸建需要が高くマンション需要の高い立地ではない。単に表層を綺麗にして貸し出すだけでは、人口減少地域に新たな住民を呼び込み、地域に根づく拠点には到底なり得ない。
そこで私たちは、地元企業の株式会社七保と共同で「空間再生(ハード)」と「コミュニティマネージャーの常駐による継続的なコミュニティ形成(ソフト)」を一体とした一棟リノベーション事業を提案した。提案は高く評価されて採択に至り、事業主の七保は山梨県と「子育て世帯への住環境の整備の促進に関する協定」を締結。民間活力を活かして地域の未来を支える、前例のない拠点づくりがスタートした。
人口減少が進む地方都市。限られた事業条件のもとで、コミュニティへの投資は成功するのか。私たちは付加価値を最大化する空間設計に挑んだ。共用室「みんなのへや」には、シェアキッチンや図書コーナーを設けた。屋外は広場として整え、室内とつながるデッキを新設した。昼は育児休業中の親子がくつろぎ、夕方は子どもたちが宿題をし、複数家族で食卓を囲む。「自分のリビングの延長」のような光景が日常になった。季節行事やウェルカムパーティ、ワークショップも定期的に開催され、年2回のマルシェには、地域住民も集う。
竣工から1年。入居者の約3分の1が子育て世帯で、20代から70代、単身者や二人世帯まで幅広く暮らし、半数は県外からの移住者だ。彼らに寄り添うのは、自らも東京から移住した「当事者であり、お隣さん」として常駐するコミュニティマネージャー。「どんな人が住んでいるか」が分かることは、見知らぬ土地での安心につながり、移住地での日常を一層楽しく豊かなものにする。何気ない会話から、子育ての相談に発展することも。まさに「令和の長屋」と呼ぶべき安心感がここにある。
住民同士のつながりは地域へと広がり、孤独の解消や地域防災など、社会課題を乗り越える力にもなる。
かつて職員宿舎として公共の役目を担った建物は、民間へ引き継がれたいま、別のかたちで、もう一度地域を支え始めている。
| 費用 | 物件種別 | マンション | |
|---|---|---|---|
| リノベーション 形態 |
リノベーション賃貸 | 家族構成 | |
| 築年数 | 32年 | 面積 | 4,912.66㎡ |
| 施工期間 | 6.5カ月 | 構造 | 鉄筋コンクリート造 |