2026.08.17
株式会社NENGO
既存住戸は約77㎡の4LDK。大きなルーフバルコニーと二面開口を持ち、光や風、外部への広がりを感じられる恵まれた住戸であった。一方で、キッチン、ダイニング、リビング、和室、洋室などが壁や建具によって細かく仕切られ、中央の廊下から各室へアクセスする一般的な構成となっていた。そのため、視線や人の動きはそれぞれの室の中で途切れ、ルーフバルコニーから得られる光や風、外部の気配も住戸全体へ十分に広がっていなかった。また、各室に明確に細分化されていたことで、床面積以上に窮屈さを感じる構成となっていた。内装も既製品を中心とした均質な仕上げで、素材そのものの手触りや肌理、光による陰影を感じられる場所は皆無であった。恵まれた外部環境を持ちながら、空間、動線がそれぞれ分断された状態にあった既存住戸。その潜在的な魅力を引き出し、暮らしの中に余白と静けさ、素材感をつくりだすことが、今回の改修の出発点となった。
閑静な住宅地に建つマンションの住戸改修である。周囲には戸建て住宅や街路樹の緑が点在し、穏やかな空気が流れている。既存の住戸は、機能ごとに細かく区切られた典型的なマンションの間取りで構成され、大きなルーフテラスのある角部屋のメリットが十分に享受されておらず、空気の流れや空間的な広がりも乏しく、やや籠った印象であった。今回の改修では既存の個室配置を踏襲しつつ、LDKにのびやかな広がりをつくり、角部屋の特性を享受できるようにプランや素材を整理した。また、住まいの中心となるLDKと各部屋をゆるやかにつなぎ直し、光や風、視線が通る奥行きを感じられる構成とした。内部の仕上げはタイルとポーターズペイントを採用し、基調とした柔らかなベージュで全体を包んだ。光の当たり方によって微妙に表情を変えるその質感は、空間に穏やかな陰影と深みをつくりだしている。家具や造作も過度に主張することなく、床や壁の色調と呼応するように整え、空間全体が穏やかに調和するように心がけた。さらに断熱改修によって温熱環境や遮音性を高め、総合的な居住性の向上を図った。見えることと見えないこと。住まいにはこの両輪が不可欠である。均質化、規格化されたマンション内部に手仕事の柔らかな肌理を重ね、空間に静かな温度と揺らぎを加えた。余白を大切にした設えは、暮らしの変化を受け止めながら時間を纏い、ゆるやかに表情を深めていくことを願っている。
| 費用 | 3045万円(税込) | 物件種別 | マンション |
|---|---|---|---|
| リノベーション 形態 |
中古を買ってリノベーション | 家族構成 | ファミリー |
| 築年数 | 29年 | 面積 | 77.73㎡ |
| 施工期間 | 6ヵ月 | 構造 | RC造 |