2026.08.07
株式会社grooveagent
1970年代頃に建てられた家には、大量生産が本格化する以前の建材が多く使われている。当時の木材は目が細かく、建具などにも手仕事の精度が残っている。それらは現在同じ品質で調達しようとすると高価で、そもそも入手できないものも多い。つまり築50年の家は老朽化した負債であると同時に、現在では手に入らない資材の保管庫でもある。問題はその価値が建築内部に隠れていて、外からは見えないことだ。だから多くの場合、価値のない古い家屋としてまとめて解体され、新建材に置き換えられてしまう。
今必要なのは新しくつくる技術ではなく、既にあるものを見極める目なのではないか。何を残し何を手放すかを判断できれば、平凡な一軒から質の高い建築ストックを引き出すこともできる。それは資源の節約という以上に、その家にしか出せない表情を得る確実な方法でもある。この家に残っていた長押や木組も、そうして掘り出された50年分の価値である。
空き家は、なぜ空き家のままなのか。住む人がいないからである。ならば、住宅であることをやめればいい。
羽田近くの1977年築の木造住宅は、再建築不可で図面すら残らず、個人の買主では住宅ローンが使えないという高いハードルがあった。
私たちはこの家を、人が住む器ではなく人が訪れる器として捉え直した。可能にしたのは特区民泊で、国の認定により通常の民泊にある営業日数の制限を受けず、年間365日運営できる制度だ。対応自治体は全国的に少なく、東京ではこの家がある大田区のみ。制度を使えば、誰も住まなくとも収益が管理コストをまかない、空き家は<管理され続ける建物>になる。
古民家と呼べる築年数ではない、平凡な木造住宅。だが収納や壁を戦略的に間引くと、長押や木組といった骨格が現れた。日本らしさは、つくり出さずともそこにあった。掘り起こした日本住宅らしさと、創出した吹き抜けや土間、サウナ設備は、主客として見据えるインバウンド視点での<非日常の演出>だ。
制度が使える地域は限られている。しかし<家として継承>せずに<宿として管理し続ける>可能性を、大田区から証明できた意義は大きい。そして、平凡な家の内側に価値が眠っているという発見は、どこの空き家にも応用できる。役割を終えた建物を次の時代へ適応させる出発点は、特別な建築ではなく、前提を問い直すことにあった。
| 費用 | 2719万円(税込) | 物件種別 | 一戸建 |
|---|---|---|---|
| リノベーション 形態 |
その他 | 家族構成 | その他 |
| 築年数 | 48年 | 面積 | 106.59㎡ |
| 施工期間 | 8ヶ月 | 構造 | 木造 |
お問い合わせ先
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