2026.08.04
株式会社松陰会舘
京都駅にほど近い東九条。団地の解体や住民の高齢化を経て静かに時を重ねてきたこの街は、いま京都市立芸術大学やチームラボ、Superblue Kyotoなど、文化芸術を軸とした再開発によって大きな転換期を迎えている。
その一角に建つ築100年の二軒長屋の京町家。瓦葺きの屋根と木造軸組、後年に張られたトタン波板や差し掛け屋根には、増改築を重ねた町家の時間が刻まれていた。長く住まいとして使われてきたが、居住者の高齢化とともに空き家となり、建物は役割を失っていた。
延床65㎡。二軒の町家をどう一つの空間としてつなげるか。そして、大きく変わる街のなかで、この築100年の建築にどんな次の役割を託せるのか。その問いから、鴨葱喫茶の計画は始まった。
京都駅東南部では、文化芸術を軸とした大規模な再開発が進み、新たな目的地が次々と生まれている。その向かいで私たちが選んだのは、新しく建てることではなく、築100年の京町家を使い続けることだった。
二軒の町家は、瓦屋根や木造軸組など既存の骨格を活かしながら一つの空間へつなげた。平屋建てのこの構成を活かし、新たにベタ基礎を打ち、腐朽した土台、柱を入れ替え、既存の梁に新しい梁を抱き合わせることで構造補強を行った。木造二階建ての審査厳格化のなか、平屋という条件がこの改修を可能にした。建物が刻んできた時間を消すのではなく、そこに銅板、土壁、板張りや木の家具を重ね、新しい時間を加えた。
ここに生まれたのが、本、音楽、珈琲、咖喱、酒が交わる鴨葱喫茶である。程近い鴨葱書店とともに、本を片手に過ごせる時間をこの場所につくった。アートを軸に生まれ変わりつつある東九条で、京都市立芸術大学の学生も、文化施設を訪れた人も、目的地だけで帰るのではなく、この街の日常へと混ざっていく場所でありたいと考えた。
大きな開発が街の姿を変えていく一方で、積み重ねられてきた時間を、どう次へ継ぐことができるだろうか。
私たちが選んだのは、建物を植え替えるのではなく、築100年の建築を土壌に、新たな営みを挿し木すること。その営みがこの場所に根づき、建物が積み重ねてきた時間を、次の100年へと手渡していく。
| 費用 | 3280万円(税込) | 物件種別 | その他 |
|---|---|---|---|
| リノベーション 形態 |
中古を買ってリノベーション | 家族構成 | その他 |
| 築年数 | 101年 | 面積 | 65.50㎡ |
| 施工期間 | 4.5ヶ月 | 構造 | 木造 |