2025.07.25
有限会社齋藤工匠店
福島県 県北地域に位置する福島市はボランティアや地域イベントを通じ交流が盛んな地域だ。
その舞台の一つに福島県立美術館の存在は欠かせない。
当企画のクライアントはその美術館の学芸員をされていた。定年退職後には本に囲まれた生活がしたいと思い描き、住まいの近くで書店を営むべく貸店舗を探すもなかなか良い物件に出会うことができずにいた。
そのお住まいは閑静な住宅街。
とはいえ、一歩抜ければ飯坂線沿いで学校・カフェなどが点在する人の動線が多い好立地だ。
約30年前にハウスメーカーにより建設された住宅は、予備室を一室つけようということで、何にでも使用できる和室を最後にポコッと付け加えたそうだ。
近年、その和室は親世帯の介護を想定し、ベットがおけるように一度洋室へ転身。
視線を遮るようにフェンスで閉じた空間は現在物置として使用されていた。
あるとき、自宅の閉ざした一室を書店として地域に開いては?とひらめく。
ディレクションはクライアントと美術館のイベントを通じ長い付き合いの[FRIDAY SCREEN]
学芸員としての働きぶりを知っている彼らがイメージしたのはホワイトキューブの中に本棚が整然と並ぶ空間だった。
そのイメージを共有し、実施設計・施工を担当した弊社はディティール・構造・法律的な部分を具現化し施工に踏み切った。ハウスメーカー特有の構造であることを考慮し、外壁・開口部には手を付けず、非構造部の改修にとどめる。他にもコストを抑えるため、本棚は大工造作としたり、照明をみんなで作ったり創意工夫のもと開くことができた[はなみずき書店]
竣工後、嬉しそうに開店準備する店主に思わず「地方創生に繋がりそうですね」と聞けば「そんなこと考えたこともなかった」と店主。
ただ、エネルギーに満ちた表情で「自分が好きだからやりたいことをやる。」だそうだ。もっとも好きな事でなければ長続きしないだろう。
決して本の虫ではなかったと語る店主だが、その紙の質感、本を開くときの手触りや匂いなど、物質的な存在から[本]を一つの芸術作品と捉えている。
電子書籍やネット通販で手軽に書籍が手に入る時代。改めて紙の書籍や地方書店の存在意義を考えてもらいたい。
好きなことをやっている人のエネルギーが地方創生に繋がることを祈って。
費用 | 315万円(税込) | 物件種別 | 一戸建 |
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リノベーション 形態 |
持ち家のリノベーション | 家族構成 | |
築年数 | 30年 | 面積 | 17.20㎡ |
施工期間 | 1.5ケ月 |