2024.09.18
Japan. asset management株式会社
福岡県糸島市の丘の上。南側には海が見渡せる糸島でも貴重なロケーション。ここにクライアントである財団が保有する古家の母屋と離れの戸建て2棟が斜面地の際にあった。糸島は、福岡市内からも近く、今や注目される2拠点居住などで注目されるエリアであるが、かつて都市計画区域外であり、当時規制も少なかったことからセルフビルドで建築された建物だった。そんな母屋から望む景色は海を見渡す絶景だが、その母屋の配置上北側にある中庭や離れからの絶景が望めないことだけでなく、事前の調査で発覚したのが、過去に建物を建てるために植物を伐採したことなどが原因で土壌が乾燥し痩せてしまい、基礎の断裂が発覚するなど、さまざまな課題を抱えていた。この土中環境の問題は、建物への影響だけでなく、日本の住宅地山間部の各地に多発している自然災害にもつながる現象との気づきからスタートすることとなった。
この財団の理念は“雲孫世代まで跨がる、社会と共創する熟達”、このミッションをこのプロジェクトに反映すべく熟考した。9世代まで跨る建築とするには自然と共存するだけでなく“呼応”することも設計に取り入れることを考えた。
母屋は日本古来の気持ちの良い“軒下空間”としたことで、景観、中庭、離れの境界線がグラデーション化され自然に呼応する。離れは温熱環境を考え、Ua値を0.24(HEAT20G3)の日本最高基準まで向上させることでそのグラデーションの中でも人の身体的な必要性能を補完する。外気に触れる部材は、すべて九州圏内の杉の赤身を無塗装で使用した。アッシュ色に変わる経年変化はランドスケープの中でも自然と共存する。また土中環境の改善として、母屋と離れをつなぐウッドデッキの支柱はコンクリートや束石は使わず、糸島の間伐材を焼き杭にし、地表に突き立てることで雨水が杭から地中に還元される。抜本的な建築的課題を克服するのと同時に自然と共生し、森林そのものを再生することを考慮した。昨今の無尽蔵な開発が引き起こす土砂災害へ楔を打つ。
母屋のサウナはオープンマインドのコミュニケーションが展開され、張り出したデッキでは最高にととのう。それらの活動はすべて糸島の豊かな自然の中で共創し熟達されていく。このリノベーションプロジェクトが9世代先まで跨る入口になったのではないだろうか。
費用 | 6500万円(税込) | 物件種別 | 一戸建 |
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リノベーション 形態 |
その他 | 家族構成 | |
築年数 | 43年 | 面積 | 142.60㎡ |
施工期間 | 5ヶ月 |
お問い合わせ先
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TEL:03-5795-0238