2024.09.18
株式会社モリタ装芸
閑静な住宅街にあるこのお家は築23年ということもあり、一見まだフルリノベーションするには早いのでは?と思う見た目であった。ただ、近年続く夏の猛暑が現状の断熱性能ではまかないきれず、冬の暖房費の高騰もあり、建築当初に想定されていないことが起きているのが実際のところである。特にこのお家のように一昔前に建てられた家は床面積が広く、広いが故、室内環境が劣悪になりやすいため、性能のアップデートが課題になっていた。
建物の周辺環境としては、車通りは少なく、お隣りには奥様のご両親が約10年前に家を建てて暮らしている。ご両親が隣家に転居後、実家を引き継ぎこれまで暮らしてきたが、収納量の少なさと、生活動線が現代の暮らしに合わなくなってきていた。
ご両親の家とは窓越しに毎日挨拶するほど近く、とても仲が良いため庭を介してお互いの家を行き来することが多い。そのお互いの家との関係性も考慮した計画にしていった。
新潟市江南区、親世代から引き継いだ築23年と比較的新しい住宅。建て替えかリノベーションか悩んだ末、建て替えすることに決まった。
しかし、家を壊すことができなかった。
理由は解体コストにあった。新潟で有名な地場ハウスメーカーが建てた家で、建物の大きさ分の地面深さ1mまでセメントで表層改良してあった。この地盤と建物の解体費、埋め戻し、再度の地盤改良費で計700万円以上掛かることが判明した。予算総額が現実的ではなく、やむを得ず新築を断念した。
「リノベーションはピンチをチャンスに変えてくれるはず」
ここからリノベーションの計画が始まった。まず、建物の不安を取り除く必要があった。劣化状況、耐震、断熱、これはインスペクションと耐震診断・設計、断熱改修により全て改善された。また認定長期優良住宅を取得し、より快適に安心して暮らせる計画に。あとは間取りの制限を前向きに検討できれば、コストを抑え理想を叶えられる。リノベーションの良さは既存の「名残りと馴染み」を活かせることでもある。柱や梁を活かす視覚的なものの他に、何となく前の間取りの記憶をたどれること、これが実は安心につながる。一部を吹き抜けにして採光を確保し、窓を高めに配置し、周囲の視線を遮り居心地を高めた。
間取りをガラッと変えることが全てじゃない。
「壊せなかった家」は家族の思い出と共に「壊さなかった家」になった。
費用 | 2700万円(税込) | 物件種別 | 一戸建 |
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リノベーション 形態 |
持ち家のリノベーション | 家族構成 | ファミリー |
築年数 | 23年 | 面積 | 159.53㎡ |
施工期間 | 6ヶ月 |