2024.09.11
株式会社サンエキ
様々な社会背景により、今後増えると言われている「Uターンして実家に同居+リノベ」。本件もそのケースである。
神奈川県の中央に位置する厚木市は、新宿まで電車で50分の距離にある山と川に恵まれたベッドタウン。生まれ育った自然豊かなこの地で子育てをしたいと決意された。
当該マンションは結露とカビ、そして冬の寒さが深刻な問題だった。壁に断熱材を施し、これらの問題の改善を図った。また室内置きの給湯器を屋外へ移設。交換のたびに大きな負担となっていた高額な給湯器費用。これからは価格を抑えた普及品での交換が可能だ。
ここに長く暮らすお母様がポツリと呟いた「南北に気持ちいい風が抜けるのよ」を絶対活かすと決め、キッチンの設置位置を風の通り道にプランニングした。
親から子への継承。
次世代が安心して長く住み継げる住環境を整えることを目指した。
お子様の小学校入学を機に、実家での同居を決めた施主様。築41年の実家マンションは、壁式構造特有の躯体壁に囲われ、キッチンはほぼ個室状態。孤立したキッチンをリビングへ出せないか。料理しながら家族を見守れる対面型にしたい。
しかし本件キッチンは、躯体壁に大きく囲われ移動は困難。特に換気扇はダクト経路から壁を越境した移動はほぼ不可能…故に、200世帯を有するこのマンション群で対面キッチン化のリノベ事例は、まだない。常識に囚われない必要がある。壁式構造への挑戦が始まった。
壊せない壁をネガティブに捉えず、デザインの一部としてはどうだろう。躯体壁をⅡ型キッチンで挟み込んで横並びに配置。越境できない換気扇は元のキッチン内に残し、シンク部分のみリビング側へ移動。既存床下に排水勾配を確保できる余裕があったおかげだ。
壁しか見えず熱気のこもるキッチンが、バルコニー越しの緑と風を感じながら料理できる環境に生まれ変わった。
昨年末、当該住民向けに見学会を開催。ある子育て世代の方は「このマンションで対面キッチンにできるなんて信じられない」と感動、同じ間取りでの契約に至った。
築古マンションに多い壁式構造。構造上の制約が多くリノベに不向きが通説だ。新築時からの住民の高齢化が進み、空室化も危惧される。しかし発想次第で次世代を惹きつける余地があるのではないか。本件を通して可能性を見た。
費用 | 1450万円(税込) | 物件種別 | マンション |
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リノベーション 形態 |
持ち家のリノベーション | 家族構成 | 二世帯・三世帯 |
築年数 | 41年 | 面積 | 99.98㎡ |
施工期間 | 2.5ヵ月 |