2023.09.19
paak design株式会社
長崎県島原市は、雲仙山系の麓にあり、伏流水が街中の随所に湧出し、人と湧水の営みが続く町である。敷地内にも湧水が流入し、庭を縦断し、大胆にも室内に一度引き込まれ、裏に抜け、下流の住宅へ流れている。近隣の水源では毎日4000トンの湧水が噴出しており、何とかして日々の営みに活用したいという渇望の痕跡がダイナミックに現存し、この敷地の最大の魅力にもなっている。
また、島原城大手門から最も近い商人地であったことから、現在でも商店が大きく立ち並び市民の生活を支えるアーケード商店街沿いに位置している。
建物は、江戸期の商人地であった頃から存在し、嘉永元年に建築された築175年の旧綿問屋。代々守り抜いた堀部家から街の活性化の一助となってほしいという想いで寄付され、現在は島原市が所有し、2020年に改修設計プロポーザル、続いて22年に運営プロポーザルも行われ、いずれも我々チームが選定された。
アーケード商店街から足を踏み入れると、広い間口の先に大きな土間空間と小上がりがあり、「cafe mio」と名付けたカフェゾーンで全ての利用者を広く受け入れる窓口としている。宿泊施設「HOTEL水脈」のフロントはカフェに隣接し、カフェでウェルカムサービスを受けながらチェックインを行う。また、土間の小上がりから2階に上った先の屋根裏空間に、コワーキングスペース「湧(work)」がある。ここには運営する設計事務所のサテライトオフィスがあり、日頃から他県から移住してきた設計スタッフや大学生が行き交う。人口流出が避けられず、かつ大学のない街にとって、その地域に重要な役割を果たすのではないだろうか。また移住してきたスタッフにとっても、地元や商店街の方々と接点を持てるのは、双方に持続的なメリットがあるだろう。
土間空間を活用したイベントを行うなど、多様な交流拠点としての活動を始めている。 ここまでは誰でもアクセスできるパブリックスペースであるが、宿泊施設は各専用入り口からアクセスする。その先はプライベート空間であり、いずれも湧水が流れ込む庭園を眺めながら時を過ごす。
目の前のアーケードを廊下のように捉え、そこから周辺へとつながり、ここが交流の起点となりさまざまな場所に流れ込み、溜まり、そしてまた流れ、島原全体に循環していく人の流れをつくることを目指して施設名称を「水脈(みお)」と名付けた。
費用 | 5000万円(税込) | 物件種別 | その他 |
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リノベーション 形態 |
その他 | 家族構成 | その他 |
築年数 | 177年 | 面積 | 378.05㎡ |
施工期間 | 6ヶ月 |
お問い合わせ先
〒889-2535 宮崎県日南市飫肥5-2-18 2F
TEL:0987-55-0088