リノベーション事例

既存の間取りはダイニングキッチンと二つの洋室、玄関脇の孤立した一室と、部屋同士が分断された構成。収納も各室に分散しており、どこに何をしまったか解らなくなりそう。団欒の場となるべきダイニングの暗さも気になりました。お施主様は「前住居でも家事動線・収納動線に悩んでいた」とのこと。本件では『死角のない合理的な動線』をテーマに、間取りを全面的に見直すこととしました。

夫婦二人暮らしのお施主様。二人とも音楽好きで「日常の中で、気分やシーンに合わせて音楽をかけて楽しみたい」というライフスタイルをお持ちです。コロナ禍以降在宅勤務が増えたため、リモートワーク室が必須。壁や建具が極力少ないオープンな間取りを希望される一方、「友人を招いたとき生活感が丸見えになるのも抵抗がある」……以上の要望から、お部屋の中心にDJブース兼ワークルームを配置し、周囲をホール／キッチン／リビング／WICと回遊する計画としました。三面の遮音壁と下がり天井に囲まれたワークルームは、適度なおこもり感のあるかまくら形状。ワークルーム内部の音は鮮明で、開口に面したリビングへと自然に音が広がりますが、壁裏に回ると生活音に紛れる程度の音量に。戸境壁から離した配置と遮音壁で、隣戸への音漏れに配慮しました。玄関ホールには外出後すぐ手を洗えるよう、洗面コーナーを配置。天井のスタッドを物干しとしたランドリースペースはキッチンと隣接とし、料理と洗濯を同時進行できる動線に。WICは、夫婦で生活時間が異なるため、通路にレイアウトしました。建具の無いオープンな計画ですが、壁を回り込むためどの空間も丸見えにはなりません。意匠面では、躯体やプラスターボード現しを取り入れたインダストリアルなスタイルで「町工場」をイメージしました。

間取り