2018.08.20
株式会社リビタ
世田谷区の住宅街に建つ築33年の木造2階建ての戸建住宅。検査済証無し。敷地は四方を隣地建物に囲われたいわゆる「旗竿敷地」で、十分な採光や通風が得られていなかった。暗くてじめっとしている、そして市場に流通するには違法性など不透明なところがある…一般的には敬遠されがちで解体されることが多い状況である。我々は厳しい既存状態、立地条件でも普遍的価値を見出すことを目的に、外部環境と内部のつながりとを再構成すること、長く住み継がれる住まいである為の躯体性能を整えること、そして、住まい手が積極的に手を加えながら維持管理に関わり、自ら改変していきやすいシンプルな空間構成・素材での構築を行った。
家の中心にある箱型の階段室。ここが光や空気の通り道となり、かつ家全体で多様な生活シーンが生まれるきっかけをつくっている。2階の北側に広く窓を新設することで、季節問わず安定した光が階段を通して1階に拡がり、かつ、階段室の壁に張ったタイルによりやわらかな光の反射を生み出した。階段を中心にした回遊導線を持ったこの家は、ここに住むことを決めた家族の生活を受け止め、家のどこにいても気配を感じられたり、「おーい」と呼びかけるようなコミュニケーションが生まれている。さらにここでは、経年変化を楽しみ、かつ自ら家に積極的に手を入れ続けていけるようなきっかけの一つとして、「やわらかいタイル」を開発し実装した。マットな仕上がりは急須づくりに用いられる伝統的技法を用い、土の質感や、やわらかさを表現。使いながら磨きを加えることで濃淡のある光沢を作り出し、触れることでも繊細に変化し、暮らしの記憶を紡いでいく。一枚一枚貼られたタイルは、均一ではないゆらぎのある表情を生み、光を反射・拡散させる採光装置としても機能している。協働したのは焼き物の産地であり大手メーカーのタイル製造を担っていた愛知県常滑市の製造者達。時代の流れと共に生産縮小など課題が生まれており、新たな展開を模索中だ。現地のデザイナーとタイル製造メーカー、設計者、我々が出会い、プロジェクトを始動し約半年間の試作期間を経て完成し、実装するに至った。
費用 | 2400万円(税込) | 物件種別 | 一戸建 |
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リノベーション 形態 |
リノベーション済み物件 | 家族構成 | ファミリー |
築年数 | 39年 | 面積 | 115.34㎡ |
施工期間 | 約6ヶ月 |