2017.09.28
YKK不動産株式会社
築30年前後の4階建て集合住宅2棟(J棟/K棟)は、素直に南を向いて建ち並び、長年2LDKの社宅として運用されてきた。しかしながらエレベーターも無く、現在のニーズに合った間取りでは無いこともあり、2011年にパッシブタウン構想が立ち上がった際、取り壊しが計画された。日本中に多数存在するこのような壁構造の集合住宅は、一見無表情で無価値に見受けられるが、実は太陽と風に素直に設計されたパッシブ建築であることが多い。これらのストック建築に、新しいレイヤーを重ねることで、新築と同等もしくはそれ以下のコストで現代のニーズに合う超高性能なエコ集合住宅として蘇らせることが出来れば、資源を無駄にせず地方都市の街づくりに貢献できるのではないだろうか?新築よりもあえてリノベ物件を選ぶような、住宅所有よりも賃貸生活を選ぶような、そんな新しいライフスタイルを応援すべく、キーアーキテクツの挑戦が2015年に始まった。
施主の要望に応えるべく、J棟とK棟は2LDKから40㎡の単身用住戸へと生まれ変わった。世界で一番厳しいと言われるパッシブハウスの省エネ基準をクリアするべく、既存のコンクリート躯体は外断熱で覆われ、蓄熱体として内部に取り込まれた。その際、ヒートブリッジ(冷暖房エネルギーを集中的に外部に漏らしてしまう部位)となる既存の片持ちバルコニーは切断され、鉄骨バルコニーを地面から新しく立ち上げることで、以前よりも奥行のある外部空間が出現。この“減築&断熱強化“手法によって、建物の大幅な省エネルギー化が図られただけでなく、建物の自重が減った事で、エレベーター新設や、間取りの操作(一部メゾネット住戸の派生)に必要な構造壁や床の切断が可能となった。住戸内の温熱環境が大きく改善される過程で、これまでの“寝に帰る単身寮“のイメージは覆され、そこは帰りたくなる部屋、誰かを招きたくなる部屋へ。そんな変化を見越した空間デザインが必須だ。悪天候でも自転車のメンテが出来る”出会い系“共用エントランスや、オフグリッドなコミュニティ・キッチンは、”小さな我が家”に愛着を持てた人達が、コミュニティを育むための仕掛けになって欲しい。J棟は既存のボリュームのままでコスパを追及して改修後、賃貸住宅としてオープン。K棟は4階建てを3階建てに減築の上、コミュニティ・キッチンと屋上テラス付きの長期滞在型ホテルとしてオープンした。
費用 | 90000万円(税込) | 物件種別 | マンション |
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リノベーション 形態 |
その他 | 家族構成 | その他 |
築年数 | 36年 | 面積 | 999.99㎡ |
施工期間 | 2016年6月~2017年7月 |