ー AFTER ー
築40余年。
建物のみならず、設備や配管、貯水槽の衛生管理未実施など、建築に携わるものとして新築に建て替えるという選択肢はゼロではありませんでした。しかしながら、ここに住み続けてきた住人の「最後までここで・・・」の一言。
この言葉で私は、最後までこの場所でという想いにリノベーションで住み続けてもらおうと思ったことが一棟フルリノベーションのスタートです。
外壁や内装、設備、上下水道の配管など、また空室化の続く住居は店舗やオフィスとしてリノベーション複合施設を設計しました。1Fには店舗、2Fは住居、3Fはオフィス、そしてまた昔のように人が集まってくるよう貯水槽しかなかった屋上に、1F飲食店舗と連携した屋上ディナーテラス席を設け、地域社会との繋がりを感じていける建物になればと新設しました。
自治会や地域コミュニティとの繋がりの再生はスクラップアンドビルドではできない、これからの住宅課題に対するリノベーションの可能性を感じる一筋の光となり得たのではないかと思います。
BEFORE
ー BEFORE ー
1970年代に建てられた1棟6戸の分譲マンション。
閑静な住宅街で小学校の正門前に建てられたマンションは、時間の経過とともに適切な修繕が行われず、建物の経年劣化や入居者の高齢化により「老朽化放置状態」となっていました。
近年建てられたマンションには修繕計画が作成されていますが、1960年から1970年代に建てられた分譲建物は修繕計画が作成されていないケースが多く、高齢化も進み、修繕したくても修繕できない、通学路の安全確保のための改善もできず、賃貸に出しても空室が埋まらないという悪循環に陥っており、それはまた地域コミュニティとの乖離や軋轢を生んでいるように感じました。