リノベーションで新たに加える部分は建物内に残されていた物を積極的にリユースし、可能な限り既存の状態と“馴染ませる”ことを大切にしました。歴史の積み重ねをリセットしてしまうのではなく継承しつつリスタートするという想いをデザインで体現しました。
テナントはものづくりを得意とする個人事業主や数人規模の会社にターゲットを見据え、賃貸区画は10〜27㎡の全11区画で計画。集積することで文化が発信されていく場となることを目指しました。新設する壁は耐力壁として耐震改修を行い、意匠と構造の両面から合理的な計画となるよう設計しました。
目先の稼働率を優先せずコンセプトへの共感を大切にしながらリーシングを開始しましたが数ヶ月で9割以上が成約し、その後もシェア自転車や館内ルール策定、DIY相互協力、イベント開催など、入居者の発案や自治が生まれ現在進行形でリノベーションが進んでいます。
BEFORE
今となっては聞き伝えでしかなく確かな記録はないのですが、もともと小学校の講堂として建てられたそう。固定資産課税台帳によると昭和14年には建っていました。現所有者の鶴身印刷は戦後この建物を取得し、印刷工場としてニッカウヰスキーのラベルをはじめ様々な印刷物を製造していましたが、産業構造の変化、技術進歩の波に押され、数年前に印刷業を廃業されました。だけどこの建物だけでもどうにか残せないか。そんなオーナーの想いからこのプロジェクトははじまりました。