
「自宅が稼ぐ」築50年空き家がまちに開いた自宅兼カフェに
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部門
800万円以上
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費用
3,000万円(税込み)
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間取り
1LDK+SHOP
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タイプ
自由設計リノベ
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費用に含まれるもの
家全体 / 水まわり / 居室・その他 / 屋外 / 耐震補強 /
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施主支給設備(費用に含まれないもの)
焙煎機、コーヒー器具類
Before

1964年、東京オリンピックの年に建築された木造2階建ての立派な応接間のある個人住宅としてそこに存在していました。
50年超の年月が流れ、薄暗くはあったものの今ではあまり見ることさえかなわない、世に出始めた頃のシステムキッチンや、今見るととてもカッコいいブレーカーなどもあり、USEDモノがお好きでカフェ開店を計画するご主人と、会社員の奥様が一目ぼれに近い出会いで購入しています。
但し、元住人が退去してから2年超は空き家状態。
劣化も進んでいたため、スケルトンにした上で耐震改修も行うことに。
借地権、越境、既存不適格、都市計画道路、雨漏れシロアリといった劣化など、、購入前提としては課題は山積。
立地は優れているのに、薄暗さが漂う空気感。
前庭、後ろ庭含め敷地にゆとりがあるのに、鉄の門で閉ざされた敷地。
ネガティブな情報を挙げれば枚挙にいとまがないですが、少しくらい短所がある方が良いストーリー、良い空間(場)は生まれるものです。
After
1階が、スペシャリティコーヒーの豆の焙煎を行うロースタリーカフェ「FINE TIME COFFEE ROASTERS」に。
2階が、自宅。
延床面積約100㎡の木造空き家が、このような構成の店舗併用住宅としてリノベーションされ再生されました。
小田急線「経堂」駅前の農大通りという、とてもにぎやかな商店街から一本奥の通りへ入ったところにあるため、元々の人通りはそれほど多くなかったものの、人の流れも以前とは変わり、店先でコーヒーを飲む人々のにぎわいも生まれ始めました。
空き家になっていたがために街に対して閉鎖された、道行く人々があまり嬉しくない景色になってしまっていたところに、FINE TIME=「良い時間を過ごす」ことができるカフェがオープン。それによって、自宅・建物のリノベーションにとどまらない、人が集える場が生まれる、地域(まち)のリノベーションにも成功しています。
また今回の事例により示唆されたこと。
それは建築された当初(1960年代前後)には当たり前にあったであろう”自宅兼店舗”という住宅の在り方です。
過去の日本の街なかではよく見かけたであろう1階で商売を、そして2階に住まうという暮らし方ですが、あまりそういった暮らし方が多く見られなくなった現代、そして働き方や収入の得方が多様になってきているこれからの近未来において、1つの住宅の中に賃貸や店舗、事務所といった用途を混同させ、自分達が住まうだけではなく、”自宅が稼ぐ”という暮らし方を積極的に選択していく人々も増えていくであろうことを実感させられました。
最後に、店主であり、家主でもあるオーナーは、ジャパンエアロプレスチャンピオンシップ(JAC2016)3位入賞や、Qグレーダーというコーヒー豆を品評できる資格を保有しているなど、実力派のロースター兼バリスタ。
コーヒーを通じて、地域に根ざして暮らすことにしたオーナーの、こだわりの話を聞きながらクリーンな香りが溢れたコーヒーを楽しむことができます。