リノベーション動画コンテスト

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審査員長 箭内道彦 スペシャルインタビュー

リノベーション動画コンテスト
箭内さん
最初に、ハードルをあえてちょいと上げて言ってみると、「ただ変わればいいとか、変身すればいいとか、ビフォー・アフターがあればいいってことだけだとなかなかリノベーションにならない」というのがこのコンテストのミソかもしれません。
実行委員
そこにストーリーがちゃんと欲しいってことですね。
箭内さん
リノベーションされる前のものの何かが、その後に活かされているっていうのが、このお題の求める「ストーリー」ですよね。
箭内さん
そういう意味では、じゃあ、今回の動画で僕だったら何を表そうか、と思った時に、リノベーションされるモノの、そもそもの本質っていうか価値からいったん掘り下げてみるのがこの動画作りのスタートなのかなと。
実行委員
住宅とかだと、例えば家族の歴史を表す天井に残った傷跡とか、子どもの背を測った柱の傷とか、そういうものが実は本質だったりする。
そういうモノの本質がどこかっていう視点ですね。
箭内さん
だからまあ、もし自分が応募しようとすると、一瞬ハードルが高いかもと思っちゃうかもしれないなと。
でも、だからこそ面白いんだよ。そこが意図ですよね。

人生全て、世界にあるもの全てがリノベーションされる可能性を持っているし、リノベーションされるべきだし。で、それは別に硬いことじゃない。
とにかく、人生そのものにかかるようなテーマだし、心底楽しんでもらいたいなと。
そういう課題なんです。

で、あとは、作者のオリジナリティ(=モノの見方)がね、うまく見えればいいなって。
短い動画にどう見方が入るのか、そこを見たい。
実行委員
そうかー。自分の身近に今回のテーマに対する題材が、たくさん転がってる感じですね。
日常にある風景の変化をどう切り取るのか、ということなのかもしれません。
箭内さん
これはね、審査する側が相当楽しみですよね。割と画期的なテーマかもしれない。
こんなにいろんなこと言ってますが、逆に考えすぎちゃうと作れなかったりするかも。笑

というか、話してて思ったけど、これは、僕ら(動画のプロ)に対して、「こういうこともリノベーションなんじゃないの」って、切り口提案がたくさんあるかもしれない。
リノベーション動画コンテスト
実行委員
どんなのがありますかねえ・・・
箭内さん
転職とかも人生のリノベーションだったりするかもしれない。
まあ、いつもの光景が、こう、ちょっとリノベーションしたことによって、なんか見え方が変わるみたいな。

例えば、古いお家をリノベーションして、そこをコミュニティの場にする人とかいるじゃないですか。
今までは古い家だったのに、おしゃれな、みんなが集まる場所みたいな、見え方が変わるみたいな感じですよね。強引につなげるとすると。
実行委員
動画の長さとしてはどうですか?60秒以内に、みたいになってますけど
箭内さん
1秒~60秒からですからね。これ、おもしろいですよね!
1秒でリノベーションを語れる動画なんてあったら、もうかなりグランプリ候補ですよね。
それって、ある意味、僕らにとって「動画のリノベーション」!
今まで30秒かかっていたのを1秒ですませるっていう。
なんていうのかな、新しい、価値の作り方ができましたっていうね。

僕はもうほんとに(CM秒数の)15秒人間なので、映画とか撮れと言われた時は一番キツいですよね。もう長くて長くて気が遠くなるんですよ。
あと、ミュージックビデオももう、長くて。

時間に対する人の思考の形や速度の感覚、尺に対する考え方というのは本当にバラバラ。
だから、1~60秒というフレキシブルな今回の募集要項は斬新だし納得度高い。

ちなみにね、日本のCMがあんまり発展しないのは、海外と比べて尺が短いからだっていう説があって。
海外だと60秒CMとかがカンヌの広告フェスティバルに普通に出てくるんですよ。
でも、僕は15秒だからこそ日本のCMってのが好きなんです。
短すぎるって言う人もいますが、僕はすごく長く感じるんですよね。

今回は、60秒までって本当に自由な選択ができるわけですから。
30秒で勝負する人も、60秒じゃなきゃ伝えられない前段の引っ張り方もあるし。
むしろ、あえての42.17秒とかの秒数に意味を込めてみる(笑)、みたいなこともいいよね。

あと、最適なストーリーを語った結果の長さ、なんてこともできるんだ!
うん、やっぱりこれはなんか面白いですね。どっちで行っても良いと思います。
リノベーション動画コンテスト
実行委員
ちなみに、表現の仕方はどうでしょう?
写真をスライドショーみたいな感じで見せるようなのが流行ったりしてますが?
箭内さん
うんうん。いま「写るんです♩」とか流行ってますからね。20代の子の間で。
静止画系も興味深い。
実行委員
逆に生々しい映像もあったり。なんでもありって感じでしょうか?
箭内さん
動画作ってる僕らが使う「制作」って言葉は「制約」の「制」を使うんですよね。
制約って足枷ですよね?
あると面倒だったりうざったいんですが、実は「自由に作れ」と言われる方がほんとは辛い。

だから、今回「リノベーション」っていうテーマにかけて言う訳じゃないですけど、作り手の「自由との向き合い方」をあえて作り手に突きつけてる気がして。
そこが本当におもしろいんですよね。
モノをつくる思考回路をリノベーションさせられている、という感覚ですかね。

あなたの今までのものの考え方じゃない、新しいものの考え方って、あなたにとってもっともっとあるかもしれませんねーって、こう、さりげなく静かに追いつめてきている課題でもあるから。笑
それが多分、すごく挑戦しがいあるんじゃないかな、と思うんですよね。

あー、自分はこんなに狭い視野でものを見てたのかも、って作ってて気づくかもしれない。
前しか見てなかったけど、真上も同時に見てみたら、なんか全然違ったものが見えてきた、とか。
前しか見てなかったけど、穴を掘ってみたら地球の裏側にたどり着いたとか。

「リノベーションって何だろう」っていう答えを、60秒以内の映像小論文で提出するみたいなとこありますよね。

でも難しく考えすぎちゃうと、逆に見る側の「目から鱗」は落ちたりしない。
一回難しく突き詰めた後に、どれだけ削ぎ落して切り捨てて、簡単に、あっけなくしていけるかっていう。

うん。やっぱりこの課題は非常におもしろいと思いますねー。
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