http://www.renovation.or.jp/expo2013/oftheyear/view/404
無差別級部門

築40年プレハブアパート再生 [さくらアパートメント]

部門 無差別級部門
費用 プライスレス
間取り 1R/1LDK
タイプ 賃貸リノベ

費用に含まれるもの

家全体 / 水まわり / 居室・その他 / 屋外 / 耐震補強 / 断熱改修 /

施主支給設備(費用に含まれないもの)

BEFORE

Beforeコメント:

 本計画は、築40年弱の軽量鉄骨造の量産型アパートを改修したものである。本敷地はその昔、母屋の傍らにある松林であり、今回の改修においても木々の多くは当時の苗木が数十年かけて育ったものを継承することによって、その頃から変わらない空気感や風の抜け、採光など、良環境を保存・再現する事、また、量産型アパートの工業製品らしさと掛け合わせることにより、ハードウェア・ソフトウェアともにこれから10年、20年先においても収益不動産として、また街を構成するひとつの建築物としても生きながらえていくことを目論見としている。
 原建物は1970年代に発売されたセキスイハウスBFA型(アパート)である。本建物が新築されたのが1975年であるため、初期モデルであると思われる。日本の賃貸アパートの平均寿命が20年前後と言われる中、すでに2倍近い年数も生き延びてきたことになる。それを更に延命させようという試みになぜあえて挑む必要があるのか?そしてなぜ可能であったのか?
AFTER

image1

  • thumb20
  • thumb21
  • thumb22
  • thumb23
  • thumb24
  • thumb25
  • thumb26

Afterコメント:

 ストック型社会への移行に関しては、住宅投資に対する国富向上、環境・エネルギー問題の改善、多様化・高度化する居住ニーズへの対応等、その重要性が明らかとなって久しい。住生活基本法に沿った様々な施策が推進されているものの、その大半が中古住宅のネガティブ印象を払拭することに費やされている。本計画においても、建物の長寿命化のために設備・電気系統の更新、外壁・屋根面の断熱性向上、耐震補強等の性能向上は当然実施している。しかしながら、建物を耐久消費財の地位から引き上げる為には「使われ方」に魅力がない限り物理的な性能向上は意味をなさない。

 本計画が賃貸住宅(=商品)として生き続ける事ができるのは、今まさにこの建物が「旬」を迎えているからだ。70年代の合理主義的価値観がにじみ出る当時のデザインは、当時においては未来的なインプレションを目指したのであろうが、40年経った今では木賃や古ビルとは違った風化の魅力が開花している。ロングライフデザインの人気や世界的に広がるレトロ・リプロダクションの盛況を見れば60s70sのデザインがジェネレーションYの日常において確固たる地位を占めているのは明らかである。
 この様な背景のなか、私たちは「いよいよ住み頃」であるという思いにしたがい、本建物のポテンシャルを最大限に引き出す事に努めた。
物件情報
築年月 1975年03月
構 造 軽量鉄骨造
リノベーション面積 168.00㎡
施工期間 3ヶ月
備 考 改修工事の構造計画に関して

経堂さくらハイツは軽量鉄骨造の認定工法による建物である。認定工法による軽量鉄骨造とは在来木造の骨である柱梁を木造から軽量鉄骨へ置換したものとして開発された工法である。ハウスメーカーにより認定を得る程度まで実績が積み重ねられたものであり、構造的な安全性もそれなりに確保されていると考えられる。但し、建築基準法上軽量鉄骨造は鉄骨造と扱われる。耐震診断上は鉄骨造として取り扱うことが本来必要である。しかし、鉄骨造の耐震診断に際し用いるF値(接合部や柱脚の形式から求められる)は重量鉄骨を対象として求めるよりなく、すべてを安全側に考えて軽量鉄骨造に適用することは現実的でない。そして、元施工者が認定情報(建物の耐震性に関し)を施主に対してすべて開示しないため、認定情報に基づく耐震診断が行えないのも事実である。
そのため、本計画に際しては「認定工法による建物」「重量は在来木造とほぼ同様」であることから、在来木造の耐震診断の手法を適用して耐震診断および補強を行った。フレームとしての強度は許容応力度解析により、接合部の補強を行っている。また、既存ブレースのみで不足する耐震性能は雑壁扱いの構造用合板に期待する手法とした。
掲載会員企業
株式会社ブルースタジオ

物件一覧にもどる

PAGE TOP