コロナ禍という状況下においても、シンプルに『楽しく笑顔で過ごせる住まい』にしたいという思いから、家族旅行に行けない代わりに『会話』と『時間』をより一層豊かに楽しめる空間をデザインしました。コロナ禍の、せめてもの贅沢として休日に親族や友人を招いて大人数でも距離を保って家で楽しめるよう、リビングフロアには一段下げたスペースを作り、下げたところをベンチ代わりにしてみんなが輪になって会話ができる仕掛けを設けました。また、開放感のある窓を境にLDとウッドデッキを連ねることで、外でバーベキューやプールを楽しむ人ともコミュニケーションがとれるようにデザインしました。そうすることで、LDK全体でみんなが会話と時間を共有し、楽しむことのできる空間が実現しました。また、自然と調和したフランク・ロイド・ライトの建築物、“落水荘”をオマージュしたデザインをリビング階段に落とし込み、コロナウイルスと共存した時間がいずれ過去となった時でも『家族と過ごした特別な時間』を忘れないよう、もう一度、“大切なものは何なのか”を考えさせてくれる象徴としています。その他にも、2階にスタディスペースやホール部に読書やヨガなどを楽しめるフリースペースを設けたり、外観に『杉の鎧張り』『焼杉』を用いることで、住まう人が時間を重ねることの『美しさ』や時間を自在に操る『楽しさ』を住まいを通して感じていただければ嬉しく思います。
BEFORE
平安時代に創設された福寿山不動院長楽寺が地名の由来になった『長楽寺』という歴史ある地域に41年前に建てられた住まい。前オーナー様が高齢のため施設に移転されたことで、2年程空き家になっておりました。この家を見た第一印象は、リノベーションをすることで、“まだまだこの地域で活躍できる・活躍させたい”という強い思いでした。ただ、外装・内装は当時のままで手つかずの状態。キッチン、浴室、トイレ、洗面のどれをとっても昭和にタイムスリップした感覚に陥るほどの状態でした。しかし、思いを諦めることができなかったので、第三者機関によるインスペクションの結果で判断することにしました。耐震上の問題はありましたが、建物自体の劣化の度合いは少なく、状態も悪くなかったのです。デザイン性・耐震・断熱性能を向上させることで、安心感のある『空き家+リノベーション』の可能性を広げられるよう、このプロジェクトはスタートしました。