プランを考えていく中で、重要視したのは「暮らしやすさと予算のバランス」である。すでに仕事をリタイアされた施主様の今後を考えると、予算内で安心できる暮らしの提案が不可欠だ。
行く手を阻んだのは、断熱材がほぼ入っていない築43年のマンション。
二重窓だけでなく外周面にも断熱材を入れたいが、断熱材は費用が上がる。そこで、買取再販業のメリットである「自社の標準設備・建材」を取り入れコストを下げ、外周面の断熱、二重窓、さらには床暖房を予算内で実現させた。
課題だった3点ユニットは、約3倍のスペースを使ってゆとりある洗面室、1216の浴室、独立トイレに分離。洗面室の入口をリビング内に設置し家事効率を向上。寝室は3枚引戸で仕切り、LDKと寝室の行き来をスムーズにした。
高さを活かした提案は避け、昇降機付きの吊戸棚や、スイッチの位置も通常より少し下の高さで揃え、1か所にまとめた。
内装は一見、何の変哲もない部屋に見えるが、暮らしてみると住む人にぴったりと寄り添う住まいだとわかる。大切にしている刺繍や竹細工の作品が部屋のアクセントとなり、シンプルな中にも、暮らしやすさを追求した住まいに仕上がった。
入院中に枯らしてしまったシルクジャスミンを改めて育ててみたいと笑顔を見せる施主様の「いくつになっても新しいことに挑戦するエネルギー」に私たちもパワーをもらった。
BEFORE
施主様は、宮崎県で一人暮らしをしていた年配の女性。病気をきっかけに、息子・親族が暮らす東京へ移り住むことになった。
周辺の環境と2面採光という条件が気に入り、文京区にある現況物件の購入を決められた施主様。近くには大きな植物園や桜の名所があり、大通りに面しているが閑静な住宅街として人気のエリアである。
一方で1980年築のマンションの室内は古く、宮崎の冬と比べると余計に寒さが身に染みる。
そして一番の問題点は、水廻りが3点ユニットだったこと。病気によって足に不自由が残る体には、厳しい環境だ。
東京での暮らしを支える住まいは、施主様のライフスタイルに最大限寄り添ったものでなければならない。
施主様からいただいた要望は「ゆとりある水廻り」「二重窓」「床暖房」の3つ。
要望の実現はもちろん、年配女性の一人暮らしであることを考慮した間取りづくりを意識した。