「おしゃれなデザインの家を作ることが、リノベーションなの?」。
近年、「リノベーション」という言葉が浸透し、認知度も上がっていますが、デザイン先行の空間づくりが主流になってしまっていないでしょうか。機能的でかっこいい、自由度の高い家づくり。それはそれで良し。でも本当に、それを叶えることだけが「良いリノベーション」なのでしょうか?
大切に建てられた家を、そして、その空間を大切にしてきた人の「想い」を、次に住まう人につなぎ、循環していくのが、本来、リノベーションをする上で一番大切にすべきこと――。新旧のオーナーの間に立ち、設計や不動産に携わる側として、その想いをより強く感じた瞬間は、この事例が完成して元のオーナーがうれしそうに話す、この言葉を聞いたときでした。「良かった、このお家を大事にしてくれる人が見つかって」。
今回リノベーションした物件は戦前、避暑のために建てられた古民家。築年数不明ながら、購入の決め手となったのは、「築年数が経っていても状態がキレイだったこと。前のオーナーさんが大切にされてきたことがわかる、良いお家だなと感じました」と現在のオーナーが語ります。味わい深いしつらいを、あえて残した部分も多くあり、大切に使われてきた空間の良さを活かす工夫も。
建物を、そして、家づくりを通して、住み手の「想い」を受け継ぐ。リノベーションの「原点」に立ち返ってみませんか?
BEFORE
「時を重ねた空間でも、自分たちの価値観に響くものがあれば、大切にして住まい続けていきたい」。そういった価値観をもつオーナーの奥様は、以前の住まいでも築100年近い借家を選ぶほど。当初、新築物件を考えていた旦那様も、「新築でも時間が経てば古くなるし、価値も下がる。それなら、良い感じの中古物件のほうがイイ」と考えが変化。夫婦の意見が一致してから出会い、即決したこちらの古民家には、母屋と離れ、そして季節の草花のゆれる庭があり、どの部屋も日当たり良好。「最高に居心地が良い!」と家族も猫たちも大満足。「薪ストーブのあるリビングやダイニングで、気分に合わせて快適にすごせてうれしい」と笑顔で語ります。