「城を眺めるようになりました。毎日色が変わるんです。あ、今日は何色だなとか考えたりして。」
熊本市中心部、かつての城下町であるその場所で施主は料理人をしている。
仕事場から徒歩数分の立地、その利便性から購入を即決した中古マンション。
窓から熊本城を望むこの部屋が今回の現場だ。
設備機器・内装共に、きれいに管理されており、なるべく今あるものを活かしたいというのが施主の希望。
既存資源を大切にする思考は、結果的に優れたコストパフォーマンスを生み、すべてを一新するよりも、暮らしの質の向上へと繋がる。
これまで使ってきた北欧ヴィンテージの家具に合う内装、施主の暮らしに合わせた収納や生活動線。
リノベーションで加えたのは、ほんの少しのスパイス。それを暮らし方で料理するのは施主だ。
熊本地震復興の象徴でもある熊本城は、2019年より大天守の特別公開、その後ライトアップがはじまった。
奇しくも同時期より流行したコロナで、飲食店は大打撃を受け、料理人である施主も苦しい時期を体験した1人。
長引いたコロナ渦をようやく乗り越えようとしている今、窓から望む熊本城の光は、地震やコロナに負けず暮らしを営む人々の目に美しく映っているに違いない。
BEFORE
売り物件がなかなか出ないエリアで、タイミング良く売りに出たマンション。
そのままでも住むことができるこのマンションでリノベーションに踏み切ったのは、料理人である施主が、完成までにあと少し足りないスパイスを欲していたからだ。