私たちは、外と内を繋ぐ半屋外空間のインナーテラスで外との距離感をデザインするということにチャレンジしました。
外履きで使える空間をベランダ側に設けることで、既存サッシを開け広げれば奥行 3.5m程の外空間として利用できます。
サイドテーブルや椅子、観葉植物等を置いて、アウトサイドリビングの様な使い方も良いでしょう。
インナーテラスと居間の間には障子を走らせました。
障子の開け方によって外との距離感を調整でき、壁の中に引き切れば大開口にもなります。
他にも、足触り良く柔らかい杉の浮造加工の床板、100%天然素材で調湿・消臭などの効果がある左官壁、小幅風無垢杉の天井板、限りある面積を美しく機能的に使いこなすための引込戸と回遊動線など私たちがこれまで実践してきた中で採用してきた素材、考え方を随所に散りばめています。
自然由来の素材たちと、外でも中でもない曖昧な空間が、あたたかい光、さわやかな風、しとやかな雨を取り込み、暮らしをより豊かにする、呼吸する空間となりました。
BEFORE
マンション8階に位置する対象物件の第一印象は、空へ視線が抜ける部屋であるにも関わらず、「外が遠い」ということでした。引き違いサッシのみで「内と外」が隔てられ、空気を味わうゆとりのなさと、心理的な遠さが気になりました。外部環境との接点となるベランダは、奥行が浅く洗濯物を干すとスペースが埋まり、気候の良い日に椅子を出して読書をしようにも、隣室とは簡素な間仕切壁でプライバシーが確保されていないため、とても過ごしやすい空間とは言えませんでした。