日本においてリノベーション住宅ビジネスが始まったのは1998年と言われています(LIFULL HOME'S 総研 STOCK & RENOVATION 2014より)。本事例の施主のUさんは夫婦ともに22歳。生まれた時から「古い建物をリノベーションして使う」という価値観が身近にあった、まさにリノベーションネイティブです。リノベーションのきっかけは学校の卒業後、アートアンドクラフトの手がけた賃貸物件で2年間暮らしたこと。結婚を機に、住まいを購入してリノベーションすることを決意しました。
好きなものは好きとはっきりした判断基準を持っているUさん夫婦。物件選びの際には「階段が大変ちゃう?」という両親の意見にもめげず、「バルコニーからの眺望が忘れられない」と六甲山の麓のひな壇型のマンションの購入を決めました。
設計の際にも「自分たちが好きなもの」という基準はブレることがなく、素材を明確に選んでいきました。樹齢200年の吉野杉のカウンター、ヒッコリーの無垢フローリングと、ヘリンボーンのフローリング、木毛セメント板や輸入もののバケットシンク、アンティークの建具など、一見すると盛りだくさんですが、生活し始めるとしっくりと、Uさんらしさが滲み出る住まいとなりました。
古いから/新しいからという比較ではなく、溢れる情報の中で自らの価値観を体現化する、これからの世代のリノベーション実例です。
BEFORE
ストックは六甲山の麓の「ひな壇型」の築43年のマンションの一室。広いルーフバルコニーから神戸の街並みを見渡せます。駅からは近いものの坂道が続き、部屋までも階段しかない。それでも、ルーフバルコニーからの眺望と明るく風通しのいい室内に普遍的な魅力があり、リノベーションの素材として人気のマンションです。