二十数年前、日本で「家を買う」といえば“新築”が第一の選択肢だった。やがて"都心で広々と、自分らしく住みたい”、”暮らしに合わせた住まいが欲しい”などの意識の変化に伴い、中古物件を購入して「住まいを創る」という手法が広がり、様々な固定観念を覆す住まいが誕生した。そして今日、リノベーションは市民権を獲得しつつある。このような背景の中、本住まいでは、改めて「リノベーションならでは」の原点を反芻し、その正面から挑むことを試みた。
クライアントは都心に暮らす、共働きのご夫婦。
築50年以上、100㎡を超えるマンション。
コンセプトは「書店」のような暮らし。
スケルトンにすると、半世紀が経過し、型枠の跡が刻まれた色味の渋いコンクリート躯体が剥き出しに。
そのヴィンテージ感をさらに引き立てるため、ガラス、無垢材、天然石など、洗練された新しい素材を共存させる。LDKにはソファを配置し、贅沢にゆっくりと本を楽しむための場を設えた。一角には、にじり口のあるガラス茶室を瞑想と読書をするための空間として設けた。
暮らし方や家の形は様々であり、変化を続けいく。
それでいても尚、ストック&リノベーションの野生なる余韻は消えることないだろう。
BEFORE
築50年ほど、広さは103.95㎡、恵比寿や渋谷から程近いヴィンテージマンション。
都心にも関わらず森に囲まれた眺望がある人気のマンションだが、室内は老朽化しており、全面改修を行った。