GOOD TIME is [あの日見たかっこいい後ろ姿].
玄関扉を開くと広がる土間のワークスペース。マンションの一室としては予想外の光景に、一瞬呆気に取られてしまう。
土足OKというこの空間。スタイリッシュな色味に素地の木の質感が合わさった現代的なデザインに思えるが、実は昔ながらの日本家屋にインスピレーションを受けている。
商店街で金物屋を営んでいるという奥様の実家は、通り沿いの引き戸を開けると地続きの商店スペースがあり、その奥に家族の居住空間が広がっていた。
「商店街の昔ながらの家の形だよ。」と誇らしげに話す義父の言葉に、“なんかいいな”とご主人は直感したという。そんな造りを現代のスタイルに昇華し、モルタルで仕上げたこのワークスペースは作業机を2台並べても余裕の広さだ。デスク背面のスペースにはご主人のバイクが陣取り、仕事空間に遊び心をプラスしている。ブラック壁の前には一面に本棚を造作した。馬張りのようなデザインは棚の強度を高めつつシンプルな空間をリズミカルに演出。ぎっしりと詰まった仕事関係の本は、並んだ背表紙を見ているだけでウキウキした気持ちを駆り立てられる。
春にお子さんが誕生したK夫妻。働く場所=土間という考え方が現代の住まいに溶けこんだこの空間で並んで働く両親の背中を見ながら、お2人があの日感じた“かっこいい後ろ姿”が継承されていくのであろう。
BEFORE
神奈川県で中古マンションを購入したK夫妻。
フルリノベーション済だった内装に部分的に手を加え、自分たちのライフスタイルを落とし込んだ。
そのエリアにしては手頃な価格だったことから購入を決断したというが、ご主人の20年来の友人が徒歩数分圏内の近所に住んでいるということが入居後に判明。
地元・長野にいた時も数分の距離にお住まいだったという2人が、上京先でもたまたま近所。
運命的とも言えるこの偶然に「腐れ縁ですよ」とはにかんでいたご主人の顔が印象的だ。
そんな人との縁も合わせて、住むほどに魅力が増す、愛に溢れた空間だった。