18坪の家を増築して広くしたい。それがオーナーのご要望でした。この家は「既存不適格建物」。増築するには確認申請が必要。コンクリート造の躯体の補強には多額の費用と時間がかかるため、確認申請が不要となる10㎡以下で増築することに。それでも21坪。この小さな家に4人で暮らすには狭さを感じさせないことが課題でした。奥様は白の塗り調の壁と木の温かみをベースに真っ白のキッチンとアーチある家に憧れていました。また、沖縄の風習も大事にされていて、キッチンにはヒヌカン(カマドの火の神様)を設けたいとのこと。ウコール(香炉)が置けることも条件でした。増築するのは主寝室とし、リビングと子ども室の天井はコンクリート表しにして高さを取り、リビングと隣接する子ども室の壁には室内窓を設け、視覚的に「繋ぐ」ことで横に広がりを持たせました。
リビングから庭を見ると視界が隣の家まで突き抜けていたため、隣家との境界部分に杉板で目隠しを設けることで自宅の領域を明確化し、庭を室内空間の延長として取り込み、奥行きを感じられるように工夫。洗面室も広くするため、洗濯はオーニングを設けたウッドデッキですることに。
奥様の理想の温かみのあるタモ材で造作した食器棚とレンジフードまで真っ白なキッチンから見渡せるアーチなど、好きなものに囲まれながら小さいからこそ家族が「そばにいる」という安心感を大切にした家になりました。
BEFORE
12年前。アパート住まいのオーナーは奥様と娘の3人家族。いつかは小さくても家族がいつも近くに感じる一戸建てを夢見ていました。そして購入されたのは築15年のコンクリート造2階建ての中古住宅。1階18坪、2階17坪の完全分離型の二世帯住宅でした。
「2階は賃貸に出して1階に住もう」「子どもが増え、手狭になったら増築する?1階と2階を繋げる?」「二世帯とも賃貸にして私たちは違う場所に暮らすのもあり?」「売りに出すかもしれないね」
そう奥様と話しながら購入した住宅も時が経ち、子も成長し、手狭になったことから、今回、選択されたのは1階部分の“増築+リノベーション”でした。2階部分は建物購入時から賃貸として活用しているので、その収益は維持しつつ、「家族がいつも近くに感じる住まい」を大切にしながら、“狭さ”を取り除く。そんなプロジェクトになりました。