「だだっ広いひとつの空間を持つこと」だけが広い家の条件なのだろうか。
大きな空間とは違う方法で「広さ」を感じられないだろうか。
例えば、機能を集約した箱をずらして配置することで、路地を生み出すのはどうだろう。
路地ごとに機能を配置すると、先へ先へと空間が途切れずに繋がっていく。
まるで町屋の並ぶ通りを路地から路地へ巡るように。
空間は「壁」でしか仕切ることができないのだろうか。
例えば、通り土間と称して動線上の床仕上げを変えてみるとどうだろう。
床の素材の差異によって空間が緩く切り替わり、人の「溜まり」が生まれた。
箱と路地、空間の切り替わりにより「書斎」や「リビング」というラベルが剥がれる。
あの箱の向こうの路地は、書くところと収めるところ。
箱と箱の間にある広場は、寛ぐところとゴロゴロするところ。
家は概念の集まりで構成してもいい。
様々な溜まりから、あちこちの路地から、
この家で暮らす人々の気配がする。
BEFORE
元々の間取りが個性的な本物件。分断されていた各部屋を通り土間と箱でつなぎ、家族の気配がどこにいても感じられる家に再構成した。お施主さまのご要望で、キッチンに備蓄を兼ねたパントリーを配置し、日々の生活動線と防災意識もケア。また、将来猫を飼うご予定とのことで、キャットウォークを兼ねた造作棚や猫が通り抜けできる小窓を設けた。