コンペ入選作品はこちらでご確認頂けます。
吉里裕也
東京R不動産
代表ディレクター
今年は「ローカルをどう読み解くか」という身近な切り口がテーマだったためか、数多くの応募があった。また、審査員が色々な分野で活躍している多様なメンバーだったこともあり、プラットフォームや隙間スペースの使い方の提案など、建築の枠を超えバラエティーに富んだアイディアが集まったように思う。
特に、日常に埋もれ、なかなか気づきにくいことに焦点を当てる案が多かった。
複数の提案が似た切り口を持っていたが、その中でも特に良く練られていたものや、ちょっと未来のマチの変化を想起させる提案が最終選考に残ってきた。
最優秀作品となった『ひらかれる都市の裏側』は、何処の地域にも昔からあり、ある意味ローカルの象徴である”神社仏閣”をテーマに、まちのリノベーションを提案したものだ。境界の役割を変換するなど空間的にも良く考えられており、ローカルならではの視点も盛り込まれていた。そして、単にその周辺エリアのみでなく、日本中にも広がっていくような可能性が評価され、最優秀案に選ばれた。
他にも、目を背けがちな「まちの縮小」に対する提案、都心部郊外のベットタウンに見られる「ヨウヘキ車庫」をテーマにした提案等にも注目が集まった。視点は良いものの具体的な踏み込みに欠け弱い部分もあったが、今後、私たちが避けて通れない問題を提起してくれたように思う。
ローカルという歩ける範囲の身の丈サイズの暮らしを豊かにすることは、これからの私たちが目指すべき、ひとつの理想のかたちだろう。それは、そこに住む人がプライドをもって自らの暮らしを語り、楽しみながら生活を創りだしていく姿に表れる。
マチは、生き物であり、常に新陳代謝が行われていないといけない。
発展することは必ずしも重要なことではないけれども、多様性は重要である。多様であることによって、時には変な異分子が誕生する可能性が増えるし、それが変化のキッカケになるからだ。
今回のコンペをキッカケに、ひとりひとりが実践者となり、時にはマチの異分子になって欲しい。