リノベーションアイデアコンペの審査を通しての感想は、審査員でWIREDの編集長の若林さんが言っていた「建築とかハードなものを扱うわりには、意外と文学なんですね。」という言葉だった。ぼくもそう思った。建築のアイデアコンペにあるようなポエティックな表現は、ここでは求められていない。もっと、実感をともなった具体策が求められている。あるいは、数字を上げ、分析的に社会を見ることが求められている。その上で夢を語る。あるいは理想を語ることを求められている。片手に夢を、片手に算盤を持つことが必要なのだ。また、リノベーションに対する先行事例の研究も足らない。多くのアイデアより、より夢みたいな案が実践されていたりする。
760万戸の空き家があるのに、年間100万戸近い新築が建てられ、4000万戸はそのままな状態で、20年から30年で建替えられる。これは、はっきり言って間違っていると思う。業界も国も経済界も、変化に順応できない恐竜のようだ。恐竜はそのうち時代に取り残されて、絶滅していく。変化の先取りをして、順応していったほ乳類が次の時代を担う。それは自明のことだ。どう変化し、どう対応していくかといったことは、大上段に振りかぶるのではなく、普段の生活や活動のなかの違和感をどう活かすか、そういう芽にどう気がつけるか、そういうアンテナの敏感さが求められている。
今回、リノベーションアイデアコンペに参加した人は少なくとも、その変化を読んで動き出した人だと思う。そこでは、建築を建築だけではなく、福祉や地域社会の問題、不動産の問題など、領域を横断的に考えることが求められる。ぜひ今後もこのコンぺに注目し、参加してほしい。
審査委員長 竹内昌義