







築古マンションの価値は、古い意匠を残すことだけでは育たない。買取再販では、古さを消して新しさへ整えるほど商品価値を説明しやすい一方、建物を生んだ時代の思想や美意識まで失われやすい。そこで目指したのは、保存でも刷新でもなく、過去の価値を読み解き、現代の暮らしへ翻訳する「繋ぎ手」としての再販だった。
1973年竣工の代々木の杜ハイツには、日本庭園や光と風を意識した配置に、都市の中で自然と心豊かに暮らそうとした当時の理想が残る。そこへ、祖業のクラシック家具を現代に再構築するマルニ木工〈Tradition Project〉の思想と技術を重ね、「繋ぎ手の杜」を構想した。
外壁と近しいタイルを室内へ引き込み、既存のガラスブロックを継承。家具のモール材をキッチンカウンター、折り上げ天井、縁側の縁、玄関框へ展開し、椅子張り用ファブリックを建具へ、家具製作時の木粉を左官材へと転用した。家具と建築、過去と現在をひと続きに再編集する試みである。
再販事業者が既存ストックに宿る価値を発見し、次の住み手へ手渡すことで、築年数は弱点ではなく時間の蓄積へ変わる。新しさだけでは測れない価値を市場に提示し、住まいを未来のヴィンテージへ育てていく買取再販の可能性を示す一戸。
BEFORE
1973年竣工の代々木の杜ハイツ。豊かな植栽や日本庭園、光と風を住戸へ届ける配置には、都市の中で自然と心豊かに暮らそうとした当時の理想が残る。一方、築50年を超えた住戸を再販する際、その価値は新しい設備や仕上げに置き換えられ、作り手の思想まで失われがちだった。
マルニ木工が、祖業のクラシック家具を現代に再構築する「Tradition Project」を始動したのも同じ頃。過去の意匠を保存するのではなく、その奥にある技術や美意識を読み直し、次代へつなぐ。その姿勢は、この建物に向き合う私たちの問題意識と重なった。建物と家具、双方に蓄積された時間をどう現代の暮らしへ手渡すか。「繋ぎ手」という役割から始まった計画。

