







都市の一室に、森のような静けさと木漏れ日の気配を宿すこと。
マンションというコンクリートの箱のなかで、自然の感覚をどこまで取り戻せるのか。
本計画はその問いから始まった。
目指したのは建築的な開放性ではなく、身体がとらえる感覚の密度である。光の滲み方、影の重なり、空気の留まり方といった微細な変化を通して、時間がゆっくりと溜まっていくような住空間を構想した。 片側採光という条件のもと、南面開口からの光を空間の奥へ導くことを主題とした。壁や天井は明度を保ちながら素材感をもたせ、光を反射し、吸収し、時間帯によって表情を変えていく。移ろう光そのものが、森のゆらぎのように空間に生命感を与えている。
造作ベンチ、すのこベッド、ヨシ障子といった家具は、機能要素ではなく身体性を整える建築的装置として位置づけた。光や空気の通り方、姿勢や視線の高さを繊細に調整し、裸足で触れる感触や季節ごとの温度までを想像しながら素材を選定している。
限られた開口部とコンクリートの箱という条件のなかで、光と影、家具による身体性の調整が重なり合い、都市にいながら自然の中に身を置くような、静かな内的広がりを生み出している。
そうした感覚を受け止めるためのひとつの実験であり、都市の限られた条件のなかに、身体が自然を感じられる住空間を探る試みである。
BEFORE
既存は、南面の一方向から光を取り込む一般的な3LDKであった。
個室や廊下によって細かく分節された空間では、光や風は窓辺にとどまり、住まいの奥まで届きにくい。
各室の機能は満たされている一方で、時間による光の変化や外部の気配を、身体で感じられる余白はほとんどなかった。
限られた開口部とコンクリートの箱という条件を変えずに、より内へと光・影・風を導き、素材の感触を受け止める環境をどのようにつくれるか。

