







狩野川のほとりに佇む、築50年の空き家。長らく使われずにいたこの建物を、ゲストハウスとシェアハウスが同居する複合施設として再生した。観光で訪れる人と、まちで暮らす人。異なる時間を持つ二種類の滞在者が、同じ屋根の下で交わる場をつくることが出発点だった。
解体は最小限にとどめ、必要な範囲だけ増し張り・補修を重ねた。サッシはガラスのみ交換し、既存壁には下地を新設。床は一部を解体してスラブを土間として活かし、塩ビタイルやカフェ板張りに切り替えた。傾いた2階バルコニーは撤去し、構造負荷を下げつつラウンジから狩野川への眺望を確保した。給排水・給湯・衛生・空調換気は複合施設としての機能に合わせて新設。施工の一部は事業者自身のDIYで担い、外部発注と組み合わせてコストと質のバランスを取った。
狩野川を望む共用ラウンジには、宿泊客もシェアハウス住人も自然と集う。抜けた視界の先に川面の光が差し込み、旅人はまちの暮らしの手触りに触れ、住人は自分だけの居場所を編集していく。開業後は、お試し居住や二地域居住の拠点としても利用され始めている。空き家は、まちに開かれた「暮らしのほとり」として、人を迎え入れ続ける。地域の入り口に、灯りがともった。
BEFORE
沼津市宮町、狩野川沿いに建つこの建物は、築50年を経て長らく使われずにいた空き家であった。
元の所有者の親族が、この家で過ごした記憶を守りたいという想いから建物を引き継ぎ、再生の道を選んだ。
老朽化したサッシや設備、傷んだ内外装など、改修すべき課題は多岐にわたったが、既存の骨格や造作は可能な限り残し、必要な部分にだけ手を入れる方針で計画を進めた。
沼津市が掲げる「リノベーションまちづくり」「まちなか居住促進」の文脈の中で、この空き家を単なる住居としてではなく、観光客とシェアハウス住人の双方を受け入れる複合施設へと転換する試みである。

