







69㎡の限られた空間の中で、どうすれば豊かな生活をおくることができるか。この広さであれば、仕上げや色を揃え統一感のある空間がまず頭に浮かぶ、ここでは対話により異なる素材と色を用いた。
映像クリエイターのクライアントの趣味がDJであることがおもしろいと思った。 様々なシーンを絶え間なく紡いでできる映像と、ターンテーブルで流す複数の音楽を繋ぎプレイするDJ。 どちらも即興的で連続性がありリンクする。この個性を空間にも反映できないか。 街を巡るようにどこまでも自由に回遊し、歩きながら多様な形態や仕上げ、色がミキシングされる。
DJには、スクラッチという技術がある。既存の曲のテンポを変え繋ぐだけでなく、さらにオーディエンスを盛り上げるためレコードを擦ることでノイズを加え新しい構成に変化させる。住戸の中心には異質なノイズ、ネオンピンクに発光する空間のスクラッチ。FRPの色は照明が入るとツインカーボの建具を通して室外に漏れ出る。本来閉じられた浴室から住戸全体に波及し、この計画に変化とさらなる奥行きを与えた。
ラーチ材のベンチとDJブース、モルタルのキッチン、シルバーの壁、緑、ピンク、赤、、、日々の暮らしの中で2つのレベルを行ったり来たり、様々な場をぐるりと回ることで、映像や音楽が流れていくような多様性のある豊かな生活体験ができると考えた。クライアントの創作意欲をくすぐる空間を目指して。
BEFORE
築32年、明治大学と隣接する集合住宅。既存の間取りは90年代に大量供給された分譲マンションの典型的な田の字プラン。 北側の外廊下から玄関に入り居室に挟まれた中廊下を抜けた先に南向きの居間を有する。 均一化され誰しもが体験しているであろう住戸形式を独創性のある空間にすることがクライアントの一つの要望だった。
解体時、床は躯体に直張りだった。各配管のため床を上げると住戸の東西にレベル差が生まれる。 半分の高いレベルでは料理食事入浴などの営みを。半分の低いレベルは睡眠や団欒のくつろぎの場とした。 2つのレベルで異なる仕上げを用い回遊動線で繋ぐ。
もう一つの要望はWilliam Egglestonの写真のような古き良きアメリカと現代性を兼ねることはできないかという問いだった。彼の日常を切り取った写真には美しい赤が度々写し出される。時間が積層されたようなくすんだ赤、その色を取り込みたいと思った。

