







「バース」とは船の停泊地を指す言葉で、元は寝床を意味した。本計画は臼杵に二つの「バース」をつくることを目指した。一)入社する若者が暮らす寝床。医院時代の間仕切りを活かし17室の社員寮に転用。二)市民やゲストが集う停泊地。旧待合・診察室は壁を撤去し波止場ラウンジに、旧院長室は造船所木材を使ったコンセプトホテルに。貫いたのは「あるものを活かし、企業と地域に良い波を起こしたい」という事業主の想い。既存躯体を活かし建設費・工期・廃棄物を圧縮し、浮いた時間を地元リサーチとコンセプト構築に還元した。すでにある空間だから対話が重ねやすく、色々な人の想いを汲み取れた。波止場ラウンジの設計は引き算に徹し、地場漆喰の間接照明と最低限の設備、造船所木材の造作家具のみを足した。機能を決め切らず余白を残すことが、オープン後の展開を呼び込んだ。船を造る鉄を支え・養生してきた造船所木材(足場板/盤木等)は、風雨にさらされ職人のような風格をまとう。廃棄されるはずだったこの木材を、家具や外壁、コンセプトホテルの床・ベッド・照明・額縁にまで活用。ラウンジは地元からの声で臼杵初のコワーキングスペースの役割も加わった。近隣の高校生には無料で場所を開放しており、テスト期間や夏休みにたくさんの生徒が利用するなど賑わいが生まれている。企業と地域、双方がここで交わり、新たな活力を生み出しまた出航する、そんな波止場を目指している。
BEFORE
JR臼杵駅近くの臼杵造船所と臼杵市役所のおおよそ中間地点に建つ、1987年11月完成のRC3階建て。かつては地域医療を支えた整形外科医院であったが院長の高齢化により閉院。診察室や病室、スタッフルームなど細かく仕切られた部屋を数多く抱えていた。臼杵市は人口約3万人、石仏とふぐで知られる長閑なまちだが、高齢化や人口減少がじわじわと進んでいる。一方、グループ全体でケミカルタンカー建造の世界トップシェアを誇る臼杵造船所は、次世代を担う若手社員をこの地に迎え入れるための住まいと、企業と地域がつながる拠点を必要としていた。空き家となった旧医院が、その二つの願いを受け止める器として選ばれた。

