







京都府北部、京丹後市網野町・遊地区。三方を山に囲まれた小さな入り江の集落に、一人暮らしをしていたおじいさんは、足が悪くなり介護が必要となった。だが家の前の坂道は細く介護車両が入れず、大切な家を離れることになった。長年空き家となり雨漏りが進んだこの家を再生したのが本プロジェクトである。
おじいさんの家として保存すること、地域の人がリノベーションの可能性を感じ空き家活用のきっかけとなる展示場とすること。この2つの用途を、収益を生む宿の運営が支える形で両立させたのが「umieru」である。
建物は海に向かって縦に2つのユニットに分割し、そのために玄関アプローチを屋外化した。間取りは片側に既存階段を活かし、もう片方は新たに階段を新設。1階は柱や梁を見せない新築のような仕上げ、2階は既存の梁を活かした古民家らしい仕上げとし、明るい「shiro」、落ち着いた「kuro」という対照的な2ユニットに振り分けた。新築×shiro、新築×kuro、古民家×shiro、古民家×kuroの4パターンを体験でき、異なる好みを比べながら可能性を感じてもらえる場を目指した。
外観は焼杉と瓦で海沿いの遊集落の景観に馴染ませている。室内の一部は屋外化しデッキとして海への視線と風を取り込んだ。宿と展示場の時間を明確に分け、地域の人が泊まらずとも展示場を見学できるようにしている。
BEFORE
京都府北部、京丹後市網野町・遊地区。入り江を見下ろす崖の上に建つ、築54年・延床面積125.59㎡の木造2階建て。海に面した過酷な環境で、空き家となって数年の間に劣化が著しく進行した。遠方の親族が可能な範囲で維持し、雨漏りする箇所には発泡スチロールやたらいを置いて凌いでいた。
所有者にとっては生まれ育った大切な家。利活用してくれる人を探していたが、立地や状態の問題から引き受け手が見つからずにいた。転機は、U設計室が改修に携わった地域のコミュニティ施設「まちまち案内所」で行う空き家相談。所有者の関係者からの相談でプロジェクトが動き出した。
京丹後市には約1890件の空き家があり、子世代の都会への流出により大半が放置されている。遊地区もかつては漁村として栄えたが、大型漁港の移転で生業が移り、住む理由を失った若者が戻らない状態が続いていた。

