







既製品は、選ぶものではなく、設計の素材になれる。
建築費が高騰する一方、SNSを通して洗練された住空間を目にする機会は増えた。
しかし現実の家づくりでは、限られた予算の中で、暮らしやすさと空間の質をどう両立するかが問われている。
そこで、設計者自身の4人家族が暮らす73㎡の中古マンションを舞台に、「余白を整える」ことから住まいを考えた。
既存の3LDKを、キッチン・ダイニング・リビング・畳スペースが緩やかにつながる構成へ再編集。
収納や設備を空間のノイズとして足すのではなく、壁や家具と一体の「面」として整理し、視線の抜けと生活動線を同時に整えた。
さらに、特注品や造作の量で価値をつくるのではなく、流通性の高い既製品や標準的な材料を、寸法・配置・納まり・色数・余白まで含めて設計することで空間全体の品位をつくった。
特別な材料を使わなくても、設計によって住まいは洗練できる。
これは一つの自邸のための特殊解ではなく、建築費が高騰する時代に、より多くの人へ開かれた住宅の「標準解」を問い直すリノベーションである。
BEFORE
既存は73㎡の3LDK。玄関から中央の廊下を介して各室へ分かれる、マンションの一般的な間取りだった。
必要な部屋数は確保されている一方、廊下と建具によって空間は細かく分断され、家族が長い時間を過ごすLDK、和室、個室がそれぞれ独立していた。
限られた73㎡の中で、移動のためだけの空間や境界が多く、住戸全体の広がりを十分に活かし切れていなかった。
4人家族が暮らすうえで必要だったのは、単純に部屋を増やすことではない。
個室性を確保しながら、家族が集まる場所には視線と動線のつながりをつくり、同じ73㎡をより大きく、自由に使える状態へ整えること。
そのために、既存の「部屋の数」ではなく、「境界のあり方」から間取りを見直した。

