







改修では、110㎡から96㎡へ減築して外周部に2ヶ所のテラスを設け、さらに玄関から続く空間を半外部の「インナーテラス」とすることで、室内面積を80㎡までコンパクト化しました。家にいる時間が長くなるリタイア世代のため、面積を縮小して浮いた予算を断熱(断熱材の充填やペアガラスサッシの導入)や設備機器へ投資し、居住性を格段に高めています。リビング、ダイニング、インナーテラスにゆとりを持たせたのは、東京から孫・ひ孫が帰省した際に共に過ごせる「余白」を残すためです。
本計画の最大の特徴は、屋根の改修をあえて見送った点にあります。インナーテラスや外部テラスは天井を張らず力強い小屋組を現しとし、屋根と桁の間に透明なポリカ波板を張ることで、既存屋根と生活空間を視覚的・構造的に切り離しました。これにより将来屋根の葺き替えが必要になっても単独で工事しやすく、どのような屋根材に変わっても下部の意匠を損ないません。
また、大工の父の記憶を継承するため、既存の障子や古家具を各所に再利用。昔ながらのモジュールを活かしたことで、既存建具もリサイズすることなく美しく収まりました。
地方の持ち家層にとって、子育て後には「空間容積」よりも「ハイスペックな性能」が求められます。長寿家系の超高齢社会において、建物を小さく豊かに住み継ぐこのプロジェクトは、地方リノベの一つの答えとなるはずです。
BEFORE
敷地内には、大工の棟梁だった父が54年前に建てた平屋(90代の老夫婦が居住)と、30年前に建てた別棟(60代の娘家族が居住)がありました。娘の定年退職を機に、親子が共に安心して暮らせる「終の住処」をつくることが本計画のスタートです。
当初は築浅の別棟を改修する案もありましたが、古い平屋のしっかりとした造り、日当たりの良さ、平屋ならではの生活動線、そして解体費用の削減やリノベ後の空間の魅力を考慮し、築54年の平屋を改修対象に選びました。
既存の建物は5DKと広く、行事や子育てに対応した間取りでしたが、外壁やサッシの老朽化が進んでいました。しかし幸運にも、古い屋根瓦からは雨漏りがなく、しっかり機能していました。この状況を活かし、大きなコストがかかる屋根改修はあえて見送り、これからの暮らしに本当に必要な部分へ予算を集中させる計画へとシフトしました。

