







街なかに、目的がなくても滞在できる場所をつくる。
北九州市・小倉の公共空間に設置した「UMINATO BENCH」は、全長約14mのストリートファニチャーである。
計画したのは、単に「座るためのベンチ」ではない。ひとりで腰掛ける、隣り合って話す、座を囲む、待ち合わせる、食事をする。年齢も目的も異なる人たちが、それぞれの距離感で同じ場所を共有できる風景そのものをデザインした。
構成は、国産桧を削り出した45mm厚材による連続モジュール。座面の奥行や背もたれの角度に波のような変化を持たせ、利用者自らが居心地のよい場所を自然に見つけるアフォーダンスを促している。
3.5mのベンチ4台で構成され、単体でも、連結して全長14mとしても使用可能。配置を変えることで、日常の居場所からイベント時の人の流れを導く装置へと役割を変え、現在も広場の使われ方に応じた動線コントロールに活用されている。
さらに木部は一つひとつ取り外し、傷んだ部材のみ交換できる構造とした。部分的に修繕しながら長く使い続けることで、サーキュラーエコノミーにも配慮している。
完成後、設計者が使い方を指示しなくても、人が座り、話し、食べ、休む、それぞれの風景が現れた。
UMINATO BENCHは、家具という最小単位から公共空間の使われ方を更新し続ける、小さな都市のリノベーションである。
BEFORE
この場所は、小倉の中心市街地にあり、多くの人が行き交う広場。一般的なベンチやテーブルがあったが経年劣化によりいつのまにか撤去されていた。何もない広場には立ち止まり、語らい、ひとやすみできる「居場所」が不足していた。また、イベント時には人の流れや滞留する場所も変化するため、多様な使われ方に対応できる仕掛けが求められた。
そこで着想したのが、港(MINATO)に人が波のように集まり、ひとやすみのリズムを生み出すストリートファニチャー。海に囲まれた北九州の「関門海峡」「響灘」「周防灘」の風景や暮らしのリズムを、木のぬくもりと連続する曲線で表現した。
人が集い、語らい、まちが呼吸する。「通過する広場」を「滞在したくなる広場」へ変えることから、UMINATO BENCHの計画は始まった。