







壊せない壁があるなら、壁で区切ることをやめればいい。出した答えは、部屋の境界を壁ではなく、床でつくることでした。壁と床の位置がずれる、ユニークな間取りです。床材に変化をつけることで、それぞれの場所がまったく違う表情を持つようになりました。
築年数が古いこともあり、実際に解体してみると、想像していた通りにはいかないことがたくさんありました。もともとキッチンの壁に貼られていたタイルは、1970年代のレトロな雰囲気を残すためできるだけ残したいと考えていましたが、解体の途中でタイルが崩れてしまうという想定外の出来事も。けれど、一からタイルを選び直したことで、家全体のイメージが一気に膨らんでいきました。「タイルに合わせて棚は黄色に」そこから壁の色は水色、床はアンティーク家具の映える色へ、と塗り重ねていきました。あまり整えすぎずに、面白いと感じたことを表現したJUMBLE(ごちゃ混ぜ)な家です。
物件価格500万円、リノベーション費用1,800万円。決して安い買い物ではありません。それでも、古くてコンパクトな、エレベーターもない団地を、大人二人が本気で楽しみ尽くす舞台へと変えました。これは、リノベーションという冒険そのものなのです。
BEFORE
エレベーターのない5階建ての4階。都心から急行で20分ほどの郊外にある団地。誰もが敬遠しそうな条件を、むしろ面白がって選んだ二人。もともとは同じ団地の別室を賃貸で暮らしていたことから、おおらかで緑豊かなこの環境が気に入り、売りに出されていた一室を購入しました。
狭くて古くて不便。そんな物件をあえて選び、自分たちの手で面白くしていく暮らし方です。ただし、団地ならではの制約も。壁式構造のため、壊せない壁がありました。スケルトンにしての大改造は難しく、間取りの変更にも限界があります。
それでも、二人にはやりたいことがたくさんありました。1970年代の団地らしい雰囲気を残しながらも、遊び心のある住まいにしたい。「壁はあるけど、気にしない」そんな思い切った発想から、制約を逆手に取った住まいづくりが始まりました。

