







家族との時間とは何だろうか。働き方や暮らし方の多様化により、家族の過ごし方は大きく変化している。かつてのように家族全員が同じ時間に食卓を囲み、同じテレビを見る暮らしだけではない。それぞれが異なる時間軸を持ちながらも、緩やかにつながることが、現代の家族に求められているのではないか。本計画は約85㎡でありながら、あえて3LDKにはしなかった。私たちが目指したのは、部屋数の多さではなく居場所の豊かさである。そこで本計画では、「OVER LAP」を設計思想とした。LDK、ワークスペース、ヌックといった居場所を明確に分けるのではなく、重ねながら連続させることで、ゆるやかなつながりと、ほどよいこもり感を両立している。さらに色彩計画や素材の貼り分け、半透明の建具による緩やかなゾーニングによって、一つの空間の中に多様な過ごし方を受け止める余白を生み出した。個室でも共有空間でもない居場所が生まれ、ひとりの時間に没頭しながらも家族の気配を感じられる心地よい距離感を実現している。私たちが求めたのは、部屋数の多さではなく過ごし方の選択肢の多さである。同じ空間でそれぞれが異なる時間を過ごしながらも、家族の気配は感じられる。集まるか、離れるかという二択ではなく、その間にある豊かな時間を受け止めること。本提案は、変わりゆく家族時間に応える新しい居場所のあり方を示している。
BEFORE
専有部はワイドスパンで、各居室が窓に面する一般的な間取りとなっていた。
一方で、居室数の確保を優先したプランのため、ワイドスパンならではの開放感や採光性といったメリットを十分に活かしきれていない印象を受けた。

