







キッチンもLDKの配置も、大きくは変えていません。変えたのは、そこで過ごす人の居場所と関係性です。ダイニングチェア、小上がりの和室、窓辺のヌック。それぞれ別の場所で過ごしていても、座ったときの目線の高さが自然と合うように設計しました。近すぎず、離れすぎず。個々を尊重しながら、お互いの存在を感じられる距離です。
その空間を包むのが、宇宙船のキャビンを思わせるアールの開口。往年の映画を愛するご主人の感性から、スペースエイジやテクノオリエンタル、ミッドセンチュリーの要素を散りばめました。一方で根底にあるのは、空間を明確に仕切りすぎない日本的な感覚。異なる時代や文化を、日常から浮かないよう静かに重ねています。
隣接するSOHOだけは、集中できるよう防音材を充填してしっかりと区切りました。
家族だから、いつも同じ場所にいなくてもいい。それぞれの時間を過ごしながら、ふと顔を上げれば誰かがいる。そんな心地よい距離を乗せて、この家という船は今日も航行しています。
BEFORE
立地良し、眺望良し、広さ良し、設備良し。
気に入った中古マンションを購入したU様ご夫婦は、当初、壁紙や床、水まわりを整える程度のリフォームを考えていました。
けれど、「家はサラリーマンにとって一番高い買い物。せっかく手を入れるなら、本当に居心地のいい場所にしたい」。
400万円から始まった計画は、考えるほどに膨らんでいきます。
家族の時間も、一人の時間も、仕事の時間も大切にしたい。そして、大好きな映画やカルチャーの気配も、さりげなく暮らしの中へ。
そうして始まったのは、間取りを大きく変えるのではなく、「どう一緒にいるか」をつくり直すリノベーションでした。

