







リノベーションの魅力とは何か。それは新築と異なり既存の魅力を活かすことだと思います。以前から建物が持つ個性を活かした住まいをつくってみたいという想いが強くありました。本設計はそんな想いから始めた、夫婦2人で暮らし売却も見据えた自邸プロジェクトです。
当初、妻は「SNSでよく見る綺麗なリノベが正解では」と感じており、躯体現しに抵抗感がありました。しかし当初の想いから、解体で見えた築49年の力強い躯体と十字形プランといったかつての制約を再解釈することで、現代の暮らしに合わせられないかと考えました。
内装は新規壁の目地を既存躯体に合わせるなど力強さに寄り添う丁寧な設えとし、象徴的な梁には間接照明やカーテンレールの新たな役割を与えました。プランは奥行きや抜け感を意識し、夫婦協働を前提とした2人で使う「逆L型キッチン」を採用しています。
完成後、妻からは「躯体現しは住まいのラフさを許容してくれて住みやすい。抜けのある住まいは開放感があり、掃除がしやすくてラク。逆L型キッチンのおかげで、2人で料理しながら会話をする時間が増えて嬉しい」という声がありました。
かつての制約に向き合った本設計。結果として、そこには画一的なリノベにはない愛着が宿り、躯体のラフさとキッチンを囲む時間が心地よい会話を生む、住み心地の良い住まいが現代に生まれました。
BEFORE
舞台は、築49年・63.2㎡のマンションの一室。
居間を中心に、四方向へ部屋が広がる珍しい十字形の3DKの間取りでした。
コンパクトな広さの中で水回りの回遊動線をつくるなど、当時の暮らしやすさを工夫した、すごく合理的な住まいでした。
ただその反面、各室の建具をすべて閉じると採光が届かなくなり、居間に暗さや閉塞感が生まれてしまう課題もありました。
しかし、この住戸には一般的な長方形の住戸と比べ、魅力的な箇所が大きく2つあることに気づきました。
1つ目は、十字形の特殊な形状ゆえに外壁面が長く、多くの開口部からの採光を得られること。
2つ目は、非整形なプランだからこそ生み出せる、空間の奥行きがあること。
以上、2つの気づきより、この「開口部からの採光」と「空間の奥行き」といった魅力を最大限に引き出し、現代の暮らしへ再構成する設計方針としました。

