







この家は、10年後に住まい手が替わることを前提にリノベーションした。今の家族が快適に暮らすことはもちろん、その先にこの家で暮らす所有者へ、より良い状態で住まいをつないでいく計画である。構造・断熱など建物に残る部分は所有者、設備・内装など暮らしに関わる部分は居住者が負担する「所有と居住の分離」を実践した。
細かく仕切られていた間取りは、難聴の長男が家族の表情や気配を感じ取れるよう、LDKを中心に視線がつながる大きな一室へ再編。既存の天井を撤去し、それまで隠れていた梁や小屋組を現すことで、家がもともと持っていた骨格を生かした開放的な空間とした。玄関ホールには本棚とベンチを設け、小さな図書館のような場所に。同時に梁の補強や耐力壁の追加、断熱改修を行い、これから先も安心して住み継げる建物性能へと更新した。
仕上げには五泉市産杉を使い、木部の一部は住まい手自身がDIYで仕上げ、家づくりにも参加した。一方で、子どもたちの身長が刻まれた柱、古い家具や欄間など、この家に積み重なった記憶はできるだけ残した。新しくするものと残すものを選びながら今の暮らしを重ね、10年後には所有者自身の暮らしへとつないでいく。
BEFORE
1968年に現在の場所に新築され、その後三世代にわたり住み継がれてきた木造住宅である。子ども部屋の増築や外壁、水回りの改修など、その時々の暮らしに合わせて更新されてきた。
2015年に住まい手を失い一時的に空き家となったが、将来は所有者自身が再び暮らす予定があった。2019年からは所有者の親族にあたる家族が暮らし始めたものの、細かく仕切られた間取りや冬場の寒さ、老朽化した設備、水回りの使い勝手など、現在の暮らしには合わない部分も多かった。
一方で、10年後には所有者自身が暮らすことが決まっていたため、今の住まい手だけに合わせた改修ではなく、その後の暮らしまで見据える必要があった。耐震・断熱性能を高めながら、今の暮らしと次の暮らしの双方に対応することが、このリノベーションの出発点となった。

