『野縁の家』再現性のある工法で、再現性のない空間をつくる

マンション  /   エリア:東京都  /   掲載日:2026-08-25

マンション  /   エリア:東京都

掲載日:2026-08-25

いいね!と思ったら、
ハートをクリック! 116

renovation image

昨今の物価高騰により、リノベーションの予算的制約は一層厳しくなった。既存を残した部分リノベーションの需要は高まり、今後もその傾向は続くだろう。今こそ、部分リノベの価値が再発見されるべきではないか。本プロジェクトでは<既存を最大限活かす設計による、唯一無二の住まい>の実現を目指した。
『野縁(のぶち)の家』の天井は天井ボードだけを解体し、その下地である野縁材が現れた時点であえて解体を止めることで、特徴的な意匠を完成させている。この手法は「部分リノベならではの価値」探求の結果であった。壊してゼロからつくればたしかに良いものはできるが、既存を残すという選択にはそれとは違う面白さがある。あえて一歩手前で解体を止める引き算の工法を採用することで、「野縁」という新しい表情を獲得した。野縁材はどんな家にもあるが、その現れ方は物件によって異なる。コントロールできないからこそ、その偶然性によって生まれる個性こそが価値であり、設計の技術力が光るところなのだ。
さらにこの野縁は、将来の壁の移動を容易にする可変性インフラとして機能する。どの住宅の天井にも存在する部材だからこそ、この手法には再現性と大いなる可能性がある。
部分リノベだからこそ到達できる、経済合理性ある豊かさを示した本事例。既存ストックの可能性は無限大である。

BEFORE


before image

1979年築のマンション。状態の良い造作家具や建具が豊富に残されていたため、加工・移設して再利用した。本プロジェクトでは、特徴的な野縁以外にも多くのパーツが既存利用されている。
天井下地である野縁は、さらに解体すると、躯体現しの天井になる。2000年代以降にリノベーションが一般化する過程で、フルリノベの躯体表し天井はマンションリノベのアイコンとなった。本来見えないはずのものを見せる意外性と、設計者の意図を超えた偶然の表情を生み出す発明だったからである。この『野縁の家』は、解体しきらない部分リノベでフルリノベ同様の表現に挑戦した例だ。<コストを抑えた部分リノベでも、フルリノベの工法が意図することを実現できる>ことを提示している。AIの導入によってあらゆるものが高性能に均質化されていく中、(再現性ある手法で)複製不可能な唯一無二の住宅を残していくことは、意義のあることではないだろうか。

Before

After

    • 部門
    • 1000万円未満
    • 間取り
    • 1R
    • 費用
    • 950万円(税込)
    • 形態
    • 自由設計リノベ
  • 費用に含まれるもの
  • 水まわり / 居室・その他 / その他
  • 施主支給設備(費用に含まれないもの)
  • キッチンのタイル、漆喰・木部オイルの材料と施工はDIY

物件情報


    • 築年月
    • 1979年6月
    • 構造
    • RC
    • リノベーション面積
    • 52.70
    • 施工期間
    • 3ヶ月
    • 備考

CREDIT


  • 株式会社groove agent 設計:川島 優太 施工:奥野 勇也・中村 竜大