







目指したのは、都心にありながら、外の喧騒から切り離された静謐な住まい。
空間を構成する要素を丁寧に選び直し、装飾を重ねるのではなく、余計なものを削ぎ落とす「引き算」の設計を軸とした。
漆喰塗装の壁や天井はグレーを基調に抑え、床や建具、造作家具までニュートラルなトーンで統一。
異なる素材を用いながらも色彩を抑制することで、それぞれが主張することなく、空間全体に連続性をもたせている。
リビングは、ソファに合わせた高さと奥行き、幅をミリ単位で調整して床レベルを下げた造作。
天井高3.4mの解放感とダウンフロアによる没入感を演出している。
また、大判タイルの壁面や造作家具を建築の一部として納め、生活に必要な機能を空間の中へ静かに溶け込ませた。
照明も均一な明るさではなく、光と影によって素材の表情や奥行きを描くよう計画。
廊下の先へ続く光、壁面をなぞる間接照明、天井を走るフラットな光が、時間とともに異なる表情をつくり出す。
モノを減らすことではなく、必要なものだけが美しく存在すること。
都市の中に静かな余白をつくり、自分の時間をゆっくりと取り戻すための住まいへと再構築した。
BEFORE
福岡の中心地にありながら、都市の喧騒から一歩距離を置くように佇む住まい。
マンションの共用エントランスとは別に設けられた専用門。
その先には、1階区分の独立性を備えた約152㎡の空間が広がっていた。
もともと店舗であったこの空間は、利便性やセキュリティといったマンションの機能を享受しながら、戸建てのようなプライベート性を併せ持つ、希少な住環境である。
この場所が持つポテンシャルを最大限に引き出すため、既存の間取りや意匠を一度解きほぐし、空間そのものを再構築することから計画をスタート。
目指したのは、都心にいることを忘れるほど静かで、上質な時間が流れる住まい。
余計なものを削ぎ落とし、素材、光、余白を丁寧に整える、ミニマルな空間づくりが始まった。

