







ケアとは相互成長である。僕たちはリノベーションを通して建物を存続させながら、関わる僕たち自身も建物に育てられてきた。設計、施工、不動産、経営、FFE、宿泊、行政協議、SNS、人事。個々の技術・知恵・経験を実践のなかで学び合い、チームの能力へ変えていく。集合知が「知っていること」の共有なら、これは「できること」の相互習得だ。僕たちはこれを「集合能」と呼ぶ。
「まち泊」は静岡市蒲原の空き家を連続的に宿へ転用する。2棟が完成し、3、4棟目も進む。1棟目「456」は増築を一部生かして減築し、町家の構成を取り戻した。2棟目「新坂アガル」は昭和住宅を曲面の箱と白い箱で再編集した。
そこでは建築的美学に、広告的な「伝わる空間」、経営的な「稼げる空間」等が重なり、建築の多様性と対立性を孕む。青い曲線は、異なる要求をチームで学び、選び、統合した結果だ。
一棟をケアするたび集合能が育ち、その力で次の一棟を面白がり、またケアする。リノベーションは仕事を超え、考え、遊び、試し、つくり、使い、運営し、学ぶライフスタイルになる。トフラーのいう「生産消費者」のように、生産と消費、仕事と生活、専門と非専門という近代的な分業を軽やかに越えていく。この循環によって僕たちのエリアを守る。よし、3棟目に取り掛かろう。
BEFORE
プロジェクトを設計・経営・広告をそれぞれ専門とするメンバーで開始。
1棟目「456」は、旧東海道沿いに建つ古い町家。ミセ―ザシキ―ニワ―ハナレへと奥行き方向に展開する町家の構成に、昭和期の増築が重なり、通りから奥へと連続していた空間の秩序が分断されていた。町家としての骨格と、その後の生活によって付加された増築が混在する状態の整理が必要だった。
456を経て、チームにはInstagram、不動産、伝統工芸、PMなど、新たな視点を持つメンバーが加わった。不動産はのちに社内部門へと発展。
2棟目「新坂アガル」は、456とは対照的な昭和の戸建住宅。1000万円というローコストの中で「選択と集中」でコストに対する価値向上の最大化を目指した。また建物は定員5人で使うには面積が大きく、空間構造を整理する必要があった。

